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【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!VOL.10

英米人とのビジネス交渉に勝つ

 

今日のポイント

・英米人はWhyで攻めてくるから、それに3回答えられるように準備する。これができると「仕事ができる人」になれる。

 

国際ビジネスを勝ちぬく交渉術について今日はお話しします。「英語の方が日本語より論理的であるから、常にWhy-Becauseで考えよ」と言われています。ここではもう一歩踏み込んで、3回続けてWhy と聞かれても大丈夫なだけの準備をすることを薦めます。これができれば、あなたはそれだけで優秀なビジネスマンです。

 

1.Whyで攻め立てるのが英米人の強み

 

ある映画で見たシーン。カリフォルニアの大学生の男女が痴話げんかしているところです。

 女:「あなたなんか嫌になった。時間にルーズだし、傲慢だし。別れるわ」

 男:「Why?」

  というものでした。

 

ぼくはこの男の発言にあきれてしまいました。女は既に別れたい理由をはっきり明示しているのです。今さらなぜWhyとその理由を尋ねるのでしょうか。

 

ぼくがこの映画のシーンを紹介した理由は、これが典型的なアメリカ人の交渉の様子を示しているからです。すなわち、「ここではWhyと聞いてくる場面ではないだろう」と思う局面でもWhyが出て来ます。

 

上記の映画ではWhyの回答として、

 女:「あなたとはうまくやっていけないわ」

 と言っていました。これは「別れる」と同じ意味であって、Whyの回答にはなっていません。

 

アメリカ人たちは必要もないときにWhy を使うのですから、回答する相手もBecauseで答え始めたとしても、理由にもならないことを話しているケースが多々あります。

 

こうしたことは男女の間柄だけでなく、職場でも頻繁に見られます。

 「このコンピュータは調子が悪い。隣りのを使ってよ」

 「Why?」  といった調子です。

 

我々日本人は律義ですから、Whyと聞かれれば、「どうしてもその理由を言ってやらないといけない」という気に駆られます。しかし、理由なんか分からないことだってたくさんあります。これ以上、何を理由として答えたらいいのでしょうか。それほどWhyが乱用されているのです。

 

 このことはBecause という単語が頻繁に使われている事実にも現れています。

 

 日常会話ではBecause ときちんと発音しないで’cause とか’cosとか発音することがあります。このように短縮するのは

 I’d (had またはwould)

 He’s (is またはhas)

 といったように、使用する頻度の高い単語だけです。同じ接続詞でもTherefore とかHoweverには省略形はありません。いかにBecauseがよく使われているかが分かります。Why が多用されるからです。

 

2.Whyに対して、どこまで答えを用意するべきか

 

Whyの乱用は決して褒められたことではありませんが、この習慣はビジネスの交渉の席では威力を発揮します。

 

相手側はなりふりかまわずWhyで聞いてくると思ってください。隣りのコンピュータに席を移ってもらう場合のように、くだらないWhyの質問もありますが、「御社の製品はどうして優れているのか」といったように重要なWhyもあります。その中間的なWhyもあります。

 

こちらとしては、想定されるすべてのWhyに回答を用意しておけばいいのですが、それを目指すと「御社のパンフレットはどうして赤い色を使っているのですか?」にまで答えを用意することになります。それは現実的ではありません。

 

ここで重要になってくるのが論理戦を乗り切るルールです。すなわち、大事な問題に対して、Whyを3回繰り返されて突っ込まれても十分な答えを用意しておくことです。「Why3重作戦」です。

 

これを具体的に解説します。今、自社のソフト開発技術を欧米企業に売り込もうとしているとしましょう。

 

自分:「当社の技術を使えば、ソフトの開発コストをライバル企業に比べて格安にできます」

相手:「どうしてですか (Whyその1)」

自分:「例えば会計のソフトなら、他社での開発実績を蓄積しています。それを生かすことで工期を大幅に短縮できるからです」

相手:「過去の蓄積があるとどうして工期が短縮できるのですか (Whyその2)」

自分:「会社の基本的な経理の仕組みはどこでも同じです。基本設計がまるまる再利用できるからです」

相手:「基本設計が同じだと、どうして工期が大幅に短縮できるのですか? 基本以外の部分(詳細設計)は違うから、全体ではあまり工期短縮にはならないのではないでしょうか。(Whyその3)」

といった具合です。

 

このWhyの3番目にちゃんと回答ができれば、だいたいの場合は相手からの攻撃をかわすことができます。英米人はそれでもまだWhy攻撃をしかけてくるでしょう。その際は、「そこは当社のノウハウなんですよ」で済みます。

 

往々にして、日本人はWhy攻撃に早々と答えられないのです。途中で言葉につまると、自信がないような印象を与えてしまいます。Whyその1あたりの質問(どうして格安にできるのか)の回答に、「そこは当社のノウハウなんですよ」と言ってしまったら、「こいつと話しても仕方がない」と馬鹿扱いされるでしょう。これに対してアメリカ人はWhy乱用の文化ですから、どこまでもBecauseの回答を用意しています。

 

しかし、3回かわせば、相手から「合格」だと思ってもらえます。負けないためには、最低3回Whyが繰り返されても大丈夫な対策を立ててください。

 

 

3.3重のWhyに答えられる人は「仕事ができる人」

 

 ぼく自身はファンドマネージャですから、証券会社のアナリストたちから有望な株式銘柄の推薦を受けます。この際、3重のWhyに答えることができた人を優秀なアナリストとして信頼していました。

 

少し前のことですが、ユニクロ(ファーストリテイリング)が伸び始めたときのことです。この会社の株を買わないかと薦めてきたアナリストが2人居ました。最初のアナリストはこう話を展開しました。

 

ぼく:「この会社のどこが良いのですか」

アナリスト:「これから年率30%以上の利益成長が見込めるところです」

ぼく:「どうしてそう思いますか(Whyその1)」

アナリスト:「商品がとにかく安いんです。だからよく売れるんです」

ぼく:「どうして安いんですか (Whyその2)」

アナリスト:「中国で作っているからです」

ぼく:「中国で作るとどうして安いんですか (Whyその3)

アナリスト:「人件費が日本とは全く違いますよ」

 

ぼくは「それはおかしい」と言いました。中国の人件費が安いことがユニクロのコスト低減のコツならば、中国企業そのものが日本にやってきたら、ユニクロはひとたまりもありません。ライバルの日本企業だって中国で生産できるから、同社の強みはすぐに消えていきます。

 

しかし、現実的には中国企業が日本進出を果たしたとか、ライバル企業がユニクロの売り上げに肉薄したというニュースは聞きません。中国の人件費だけではユニクロの強みを語り尽くしていないのです。アナリストはぼくのこうした反論に答えを用意していませんでした。

 

2人目は全く違った論理でした。

 

ユニクロの服はデザインがシンプルで、万人が着られるようにできているところが長所だというのです。これがそのアナリストのWhyその2への回答でした。ファッションを追求する服は「私だけの」という消費者の願いを受け入れるために多品種少生産です。しかし、ユニクロの服は普段着ですから、少品種で大量生産だというのです。

 

大量生産ならば生地も生産コストも安くつきます。中国で作ればなお安い。しかも、売れれば店舗の数を増やせますから、ますます売り上げ増え、大量生産が可能になると言っていました。ここがWhyその3の回答です。

 

つまり、「売れるから安い、安いから売れる」が好循環しているという論理でした。どんな商売でも売れるものを作り出すのは至難の技です。ぼくはこのアナリストからユニクロの株を買うことにしました。

 

上記の例から分かっていただきたいことは、3重のWhyに答えるには深く考え抜かなくてはいけないということです。つまり、3重のWhyに答えることができる人は「仕事ができる人」ということになります。

 

 

4.英語でどう表現するかは後回し。まずは的確な中身を

 

Whyへの回答を用意することは、想定問答集をつくって、そこにたくさんの回答を書いておく、ということではありません。好例は上場企業のIR担当者です。IR担当とは投資家からの質問(Why)に答えるために存在している仕事です。分厚い想定問答集を用意して対応しています。

 

ぼくが通常最初にする質問は「御社は他社に比べて成長スピードが速いですね。どうしてですか?」というものです。投資家なら誰でもするごくありふれた質問で、この回答は想定問答集の最初のページに載っているはずです。

 

ぼくはIR担当者から答えを聞くや否や、「その回答はおかしい」と切り出すことにしています。こうすると、マニュアルにない本音が聞き出せるからです。しかし、論理的に攻められる経験が少ないのでしょう。半分以上の担当者が回答に詰まってしまいます。マニュアルに書かれた中身を自分で十分に把握していないからです。

 

試しに次の問題のWhyに答えてみてください。

 

問:「日本は景気がよくないね。どうして?」(Whyその1)

 答:「人が財布のひもを固く締めているからだよ。」

 問:「どうして締めているの?」(Whyその2)

 答:「賃金は下がるし、いつ首になるかも分かないから不安なんだ。」

 問:「どうして雇用状況がよくないの?」(Whyその3)

 

ここで、「雇用状況がよくないのは景気が悪いからだ。」と言ってしまったら、話は堂々巡りになります。どう答えたらいいでしょう? ぼくは仕事柄、経済に詳しいはずですが、的確な答えが思い浮かびません。

 

そもそも「人が財布のひもを固く締めているからだよ」という最初の回答自体がいかさまです。これは景気が悪いという実態を語っているだけで、不景気の理由を述べているわけではないからです。

 

こうして見てくると、3重のWhyに答えることがいかに大変か、お分かりになったのではないでしょうか。3重のWhyに答えることができれば、読者のみなさんは相当優秀なビジネスマンです。ここが国際化の波の中で勝ち残る重要なポイントなのです。

 

こんなに大変ならば、それを英語で言うのはもっと大変なのではないか。銅メダルくらいではできないのではないか」という質問が読者の皆さんから来るかもしれません。  その回答は後日詳しくお答えします。ただ、3重のWhyへの答えが用意できれば、山を9合目まで登ったのと同じです。後の英語化は最後の1合目程度の努力で済みます。

 

別の言い方をすれば、いくら英語ができても、答えるべき中身がなかったならば、話にならないということです。

 

 

【林則行氏のコラムより】英語。本音の上達法!Vol.9

I(私)で話し始めると、洗練された英語になる 

 

今日のポイント

・英語らしい発想の英語を話すカラクリ:必須語を思い浮かべたら、次は「人主語」を思い浮かべる。こうすれば、口から出てくる英語は頭でっかちな日本語に引っ張られることがない。

 

今日ご紹介するのは、英語学習がある程度進んだ方に最適のアドバイスです。

「英語で考えろ」といっても普通は簡単ではありません。今回はそれを一気に達成してしまう方法です。

 

これまで紹介した英語で考えるノウハウは「短い英語から始める」ことでした。

しかし、少し長めの思いが浮かんだときに、うまく英語にするにはどうしたらいいでしょうか。

 

 それが今日、紹介するコツです。タイトルにあるように、I(私)から話し始めます。これで、この後に口から出てくるセンテンスの構造が決まってしまいます。

 

 もちろん、相手のことを話すときはYou(あなた)が主語だし、第三者についての話題ならHe(彼)またはShe(彼女)が主語になります。We(私たち)とかThey(彼ら)が主語になることもあります。ぼくが言いたいのは「人を主語にして話し始める」ということです。ただ、「人主語」という言い方は分かりにくいですから、本稿ではI(私)を代表としてお話しします。

 

 別の言い方をすれば、人以外は主語にしないということです。得体の知れないことを指すItという主語も人主語ではありません。

 

 ぼくの経験では7~8割の確率で、人主語でセンテンスを構成することができます。

われわれがまず思い浮かべるのは必須語です。これがないと話題自体がないことになります。その次が人主語です。ここまで来ればほぼ骨格ができたことになります。日本人は「私は」「あなたは」をあまり言わないので、この発想は苦手かもしれません。だから、本稿ではここを強調したいのです。

 

一見してI (私)とは関係なさそうでもIを主語にできます。

「(私は)会社に行く」とか「(私は)週末は本を読む」といったことなら、主語は明らかですから、迷わずIで話し始めることができます。ここまでは何の問題もありません。厄介なのは一見してI(私)が主語ではなさそうな場合です。

 

 例を挙げてみましょう。

 

 「今日はなんだか頭が痛いなあ。」

  という思いが頭に浮かんだとしましょう。

  この日本語の主語は「頭」です。日本語からの翻訳ではこうなるでしょう。

 Today, somehow, my head hurts.

  これでもちろん意味は通じます。

 

 これに対して、日本語を介さないで直接英語に進む方法を取ってみましょう。「頭が痛い」という日本語ではなくて、日本語を忘れて、自分がそうなったときの様子を思い浮かべてください。

 Headache

 A pain in my head

  などが思い浮かんでくるはずです。これが必須語です。この必須語さえ思い浮かべば意思疎通は可能になります。しかし、今回は英語らしい英語を考えることが主題ですから、この先に進みましょう。

 

そこで、主語の出番です。ネイティブらしい発想の英語センテンスはI(私)で始まります。「『頭が痛い』って言っているんだから、Iではなくて、my head が主語じゃないの?」と思ったかたはまだ日本語に引っ張られているのです。

 

 I が文頭に、後半にはHeadacheが入ることが決まりました。すると、自分の思いは、

 I have a slight headache today.

  となって口から出てくるでしょう。

 

 日本語の「頭が痛い」が、英語では「私は頭が痛い」へと変換されているのです。

 

日本語⇒英語は語順が全然違うから難しい

 

 日本語は頭でっかち、英語は尻でっかちな構造です。上記の例における「今日はちょっと」という部分が英語では後半で来ています。これだけ語順が違うから英語を口にするのが大変なのです。

「日英の語順ってそんなに違うの? そんな気もするけど、まだ納得できないなあ」とおっしゃる方のために、日本語がいかに頭でっかちか、よく耳にする文言で確かめてみることにしましょう。

 

(1)ご家庭やオフィスでご不要になりましたテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、パソコン、コンロなどはございませんか?

 

(2)電車とホームの間が広くあいているところに十分ご注意ください。

 

(3)保存上の注意として、直射日光、高温、多湿の場所をお避けください。

 

 上記の例文で下線を付けた部分は、英語にした場合に文末に来るところです。つまり、英語では下線を付けていない部分がセンテンスの前の方に来ます。例えば、(1)では英語は”Do you have…?”となります。この後にテレビやエアコンなどが続きます。

 

 ぼくは初めて習った英語の文”This is a pen.”のそれぞれの単語の意味を聞いたときの衝撃をいまだに忘れられません。この英文は「これは・です・ひとつの・ペン」の順番でした。日本語と違う語順が許されるんだと初めて知りました。

 

 ここが英語を話すときに最も厄介なところです。それを解決する単純な方法は短い主語を先に持ってきてしまうことです。人主語を口にしてしまったら、その次はどうなるでしょうか。動詞が来るしかありません(動詞については別の機会にお話しします。)

 

今度の実例は一見すると、物主語です。それでも、人主語に変換してしまうのが賢いやり方です。

 

「水曜日は残業なし日だ」

  ここで必須語は

 水曜日

 残業なし    です。

 

 だから、英単語スピーキングのレベルでは

 Wednesday

 No-overtime work   となります。

 

 日本語直訳は

 Wednesday is no-overtime work です。これで通じます。

 

 今度は日本語にとらわれないで、「今日は残業しなくていいんだ。5時に会社を出るぞ」というウキウキした気持ちを思い浮かべてみてください。日本語の「水曜日は残業なし日だ」は、英語では「私は水曜日は残業なしだ」に変換されるわけです。

 

 その気持ちをIから始めたセンテンスにします。

 I do not have to work overtime on Wednesdays.

 I can leave office at 5PM on Wednesdays.

 I can go home early on Wednesdays.

  などが出てくるでしょう。

 

 もちろん人主語が使えない場合もたくさんあります。その場合でもこれまでの原理が応用できます。

 

 例えば、

  「ボートの長さは2メートルある」

  「富士山の形が綺麗だ」

  の場合は日本語では「長さ」「形」が主語ですが、英語では「ボート」「富士山」を主語にします。これらがI (私)の代わりになったと考えるのです。

 

 日本語からの翻訳英語はこうなります。

 The boat's length is 2 meters.

 Mt. Fuji's shape is beautiful.

 

 一方、英語的な発想では

 The boat is 2 meters long.

 Mt. Fuji has a beautiful shape.

  となります。主語に当たる個所に下線を付けました。英語的な英語ではその部分が短くなっているのが分かるでしょう。

 

 続いて、ここで紹介するYouは「あなた」ではなくて、人間一般を指す場合です。人間一般ですから、この中にI(私)も含まれます。

日本人の家に呼ばれた外国人に向かってぼくが言うセリフです。

 「日本では菊の花は持っていかないのが常識だよ」。

 実はぼく自身が菊をもらったことがあります。まさかもらった当人が苦言を呈するわけにもいかず、ぼくはそのことをアメリカ人の友人には言えませんでした。「菊は長持ちするからいいよ」と彼は言っていました。おそらく友人はその後も菊を持っていったことでしょう。誰かが言ってあげなくてはいけないのです。そこで、ぼくは今では機会があれば外国人の友人には上記のように諭しています。

 

 ここでの必須語は

  菊

  いかない

  ですから、

 Chrysanthemum, No.

  で通じます(菊は難しい単語ですから、その場に菊があれば、This flowerで十分です)。

  これだけでは聞き返されるかもしれまんが、最終的に相手はこちらの意図を読み取ってくれます。

 

 これに対して翻訳英語を見てみましょう。

  日本語の文の主語は「持っていかない」ことですから、このような長い主語はItでまず置き換えて文をつくります。

 It is common sense not to take chrysanthemum in Japan.

 となります。

 

 これでも十分に伝わりますが、It を用いずにYouで始めれば、以下のようになります。

 You do not take chrysanthemum with you in Japan.

  となります。

 

 Youで始まる英語には「常識」という言葉がありませんが、一般人のYouの中に含まれています

 

 

なお、You が一般人を指すのか、相手だけを指すのか分からなくなることがあるのではないか、と疑問に思うかたが居るでしょう。上のような英語を言ったときに、「それって、特にぼくが菊を持っていかないほうがいいと言ったの? それとも一般的な話?」と聞き直されることはないかという疑問です。ぼくの経験では相手にYouの意図が明確に伝わらなかったことは一度しかありません。

 もう一つ覚えておきましょう。Theyは政府、会社、団体、一般的な人を指します。Youとの違いはTheyには自分が含まれていないことです。

  「米国では車は右側通行だ」   は

 In the US cars run on the right.

  が翻訳調の英語ですが、主語をCarsにしないで、Theyを主語にします。

 They drive on the right in the US. 

  とするときれいな英語になります。ここまで来たらベテランです。

 

 実はぼくが英語初心者のころはこうしたYouやTheyが使えませんでした。「一般人のYou」という語法を知らなかったのではありません。知っていても口をついて出てはきませんでした。

 

 疑問文を口にする余裕がなかったように、こうしたYouやTheyを口にする余裕がなかったのです。ぼくはI(私)を使っていました。必須語を探すこと、それをつなげることに集中していて、主語についてはあまり考えない。できるだけIで通す方針でした。

 

 つまり、菊の例なら

 I do not take chrysanthemum with me in Japan.

  と言っていたのです。それでも、

 It is common sense…

  でセンテンスを始めるよりよかったのではないかと思います。これだと、「こんなこと、常識だよ。君は常識ないよね」といったニュアンスになっていたでしょう。意味が正しいかどうかより、相手を不愉快な気持ちにさせないかどうかのほうが大事です。慣れない方はYouやTheyはあと回しで結構です。

 

 一方、この「人主語」を先にする作戦は後回しにしないで、できるだけ早くから取り組んだほうがいいでしょう。英語で考える癖を付けるに比較的簡単な方法だからです。必須語を思い浮かべ、Iと言い始めたとき、あなたはもう英語らしい英語を口にしているのです。

 

【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!Vol.8

疑問文は使わなくていい

Do you knowを付ければ何でも質問できる!

 

今日のポイント

・疑問文のように厄介なものは銅メダルのうちは捨てておけばいい。大事なところに集中しよう。

 

心に思い浮かんだことをその場で口にするのは容易ではありません。そのため、「大事なところだけに集中する」という方針で臨みます。疑問文は優先順位の低い代表例なので忘れていいです。

英語を話す最初のステップは英単語スピーキングでした。必要な単語を並べるだけで話すものです。このアプローチの骨子は「大事なところだけに絞る」というものです。「ひらめき法」でも同じ方針で臨みます。

 

 銅メダル英語で英会話をする際に、「疑問文を話さなくていい」と申し上げたら、「それは乱暴だ」と思われるかもしれません。「疑問文がないと会話にならない。疑問文は中学1年から習っているのに」と反論されるでしょう。

 疑問文を避ける理由をひとことで言えば、「難易度が高いから」です。その割に絶対不可欠とは言えません。

 

 「難易度が高いとは、どうしても思えない」と思うかたも居るでしょう。それは外国人との会話の経験が少ないからではないかと察します。疑問文ではない普通の文でも、すぐに口にするのは容易ではありません。疑問文はそれにも増して時間がかかってしまいます。

 ぼくは、米国の大学院に留学した2年の間、疑問文なしで通しました。卒業するときでさえ、疑問文をもさらりとしゃべるだけの語学力は身につきませんでした。その経験から「疑問文は当面忘れていい」と申し上げています。

 

 実例を交えて解説しましょう。まず、日本語です。

 平叙文: あれはタクシーです。

 疑問文: あれはタクシーですか?

 

 となります。日本語では1文字加えるだけで、普通の文が疑問文に早替わりします。

 

 これが英語では

 平叙文: That is a taxi.

 疑問文: Is that a taxi?

  となります。

 

 英語では that と is との場所が交代しています。倒置です。

 日本語では最後にただ「」をつけるだけなのに、英語となると倒置しなくてはならないから、難易度が高いと申し上げました。

 

 ここで疑問が出てくるかもしれません。

「どうしてそんなのが難しいんだ。慣れっこになってるよ」というものです。学生時代の英語の授業中ならば、まず普通の文を頭の中でつくり、それを倒置して疑問文をつくっていても問題ないでしょう。そうやって順を追っていけば難しくはありません。ただし、実際の会話ではそういうステップを踏んでいる余裕はありません。最初から疑問文を口にしなくては間に合いません。

あるとき、ぼくはニューヨークでタクシーを拾おうと手を道の方に出しました(米国では手は上ではなくて、横に出すものです)。すると、クリーム色の車が止まったのです。ニューヨークのタクシーは黄色と決まっていると思っていたので、クリーム色はもしかしたら怪しい白タクかもしれないと思い、周りにいる人に聞きました。この車に乗るべきなのかどうか即座に判断しなくてはなりません。

 

That is a taxi?  がぼくの口をついて出た英語でした。とっさのときに倒置なんて考えていられません。

 「そういう緊急のときはしかたがないが、普段は正しい英語を使うべきだ」とおっしゃるかたが居るかもしれませんが、会話はいつも「とっさ」に対応しなければならないものです。ぎこちない間をあけないためには、余分なことを考えていてはいけません。

 

 ちなみに、中国語の疑問文は、日本語と同じように「か」に当たる語を文尾に付けるだけ。日本語と同じやり方です。中国語の疑問文は習ったその日からすらすらと口にすることができました。この際に安心感を味わい、「倒置するのはきついんだ」と英語の難しさを改めて気づきました。

 

Do、 Doesで始まる疑問文も厄介

Is で始まる疑問文は普通の文から語順が変りましたが、 Do を文頭に付ける疑問文では倒置は起こりません。それでも難易度が下がるわけではありません。

 

 Doで始まる疑問文を見ていきましょう。

 He has a good memory.  記憶力がいいんだ。

 Does he have a good memory?    となります。

 

 面倒な点はhasがhaveに変っているところです。しかも主語がYouとかIの場合はDoであり、He、 Sheの場合はDoesになるという厄介なものです。このDoは日本語では「か」の働きをすることになるわけですが、われわれは文の最後に「か」をつけるのに慣れていますから、文頭にDoを付けるのに慣れるまでは苦痛です。こんなところに気を取られていたら、肝心の中身が話せません。

 この場合も

 He has a good memory?  とすればいいわけです。文尾のイントネーションを高く上げればそれで十分です。

 

 疑問文の仲間に付加疑問というのがあります。

 He has a good memory, doesn’t he?  というものです。

「あいつは記憶力はいい、よね?

  といった感じです。途中まで平叙文で話していたのが、気が変って疑問文にするものです。話すうちに自信がなくなってきて最後に疑問を投げかけた感じです。

 

 これはぼくが薦める、最後に「?」をつけただけの対処法と似ています。付加疑問文は正統な英語ですから、こちらの方が洗練されていますが、銅メダル英語では通じることを最優先するので、「普通の文+?」で何ら問題はありません。

 

 なお、付加疑問文という存在を忘れていたかたもいらっしゃるでしょう。ここでは説明のために触れましたが、この種の英語はきれいに忘れていただいてけっこうです。

 

「文末のイントネーションを上げるだけなんて嫌だ」と思うかたは文末にRight? を付けるのをお薦めします。

 He has a good memory, right?

といった具合です。これは完璧に正しい英語です。ただし、「そうだよね。ぼくの言ってることが正しいよね」という念押しの意味合いが強くなります。

 

すべての疑問文を省略できればいいのですが、そうはいきません。5W1Hといった、「いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どのように」(When Where Who What Why How) といった言葉で始まる英語は話さないわけにはいかないからです。

 

 5W1Hで始まるセンテンスは通常の疑問文と同様に、Isの倒置やDo動詞の変化が待っています。できれば、この煩わしさから逃げたいわけです。この場合は2つの逃げ方があります。

 

(1)5W1Hだけを最後に付け加える

  「彼女はどうしてダイエットしてるの?」

Why is she on a diet?   が正しい英語です。

これを、 

 She is on a diet. と言ったあとで、 Why?   だけを付ければ、事が足ります。

 

「彼女はダイエットしてるんだ。どうして?」といったニュアンスになります。これは英単語スピーキングの延長ですが、ネイティブでもやっているので、正統な英語の端くれと考えて問題ないでしょう。

 

(2) Do you know を文頭に付ける

  相手に何か質問するときは、相手が答えを知っていると思っているから聞くわけです。従って大概の場合はDo you knowを付けることができます。これを付けると、why以下は普通の文になっているので楽に英語が口にできます。

 

 上記の文は

 Do you know why she is on a diet?   となります。

 

 意味は「どうしてダイエットをするの?」から「どうしてダイエットをするのか知ってる?」に変ります。厳密に言えば、後者は知っているかどうかだけを聞いているのですが、どちらで質問しても相手の回答は同じです。

 

 Do you knowを文頭に付けることができない場合があります。常識で考えれば分かるのですが、主語がYou(あなた)のときはだめです。

 

Why are you in a hurry? どうして急ぐの?

You are in a hurry, why?   という英語はあっても

 

Do you know why you are in a hurry? どうして急ぐのか理由は分かってる?

という英語はありません。本人は理由があるから急いでいるのです。

「お前は意味もなく急いでいるんだろう」という詰問になってしまいます。

 

 

最後に、Whyだけに特殊な言い回しがあります。How comeに言い替えることができます。

How come she is on a diet?  となります。

How come 以下は普通の文で大丈夫。倒置もDoも要りません。これは便利です。Whyに比べて若干軽い言い回しですが、この際そんなことは気にする必要がありません。

 

WhereやWhatなどにはこうした便利な表現はありませんから、(1)か(2)で対処してください。

他にも要らない表現がある:仮定法と感嘆文

疑問文以外でも優先順位の低い言い回しは忘れていただいてけっこうです。

 

仮定法とは、あり得ないことを表す文です。「自分が鳥だったら」とか「もし20年前に戻ることができたなら」というのが仮定法です。これは普通の If 文を代用してかまいません。

最後になりますが、感嘆文(なんと~なのだろう)です。そんな文体があったなあと思い出すでしょう。これは全く話す必要はありません。

 

What a beautiful flower! は  The flower is beautiful! で代用できるからです。

ビューティフルのビューを長めに言えばそんな雰囲気が出ます。

 

疑問文も仮定法も感嘆文も捨てていい、と申し上げているのは、さぼることを薦めているのではありません。

 

 私たちの現状の英語脳は、必須語とそれを結び付ける語句を組み合わせるだけで精一杯です。その精一杯な頭の回転をもっと楽にして、英語が簡単に出てくるようになるコツを次回披露します。

【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!Vol.7

最速の上達を約束する「ひらめき英語法

 

今日のポイント

・ぼーっとした時間に心に思い浮かんだことをすぐに口にする。この繰り返しが最速の上達をもたらす。

 

 第2回の「「読む」「聞く」「話す」「書く」、あなたならどれを最初に勉強する?」でスピーキングから英語を学び始めるのが最も効果的だと申し上げました。話すことは、自分の知っている単語で、自分が話せる速度で練習できるので、最も障害が少ない方法なのです。

 

これから紹介する学習法は「ひらめき英語法」(Daydreaming English)と名づけました。簡単に言うと、心の中のひらめきをそのまま英語にしていく方法です。

 

第5回で紹介した「英単語スピーキング」は、目の前に居るネイティブスピーカーを相手に、現状の英語力でなんとかその場をしのぐのが狙いでした。

このひらめき法は語学力向上を目指したものです。芝居に例えるなら前者が本番、後者は稽古です。稽古が多いほど本番がうまくできます。本番でのスピーキングが単語の羅列から文になってきます。早速その方法をご説明しましょう。

 

最も効果的な勉強の時間はぼーっとしているときです。電車の中とか家の中で、だらーっとしているときです。そんなとき、何か心に浮かんでくるはずです。

 

 ぼくの場合だったら、

  「お腹がすいたなあ」

  「今日は10時から会議だ。退屈だなあ」

  「内緒でお菓子でも食べてようか」  といったことが思い浮かんできます。

 

この心のひらめきをその場で英語にしていきます。

 

 「おなかがすいた」は、  I am hungry.

  でもいいし、hungry が思いつかなければ  I want to eat.  でもいいです。

  英単語スピーキングを生かして、ただの  Hungry!  でもかまいません。

 

 次の「今日は会議が10時からだ」は、英単語スピーキングによる

 Meeting, 10 o’clock  でもいいし、

もう少し形を整えて、  I have got a meeting at 10.

 The meeting starts at 10 today.   などでもいいでしょう。頭からぽっと出てくる英語でOKです。

 

 退屈だなあ」は   Boring    ですが、

この単語がすぐに出てこなかった方が居ると思います。この際にいちばん大事なことは「退屈」を使わないで、同じ気持ちを表現することです。

  「退屈」=「好きでない」=「嫌い」   というわけですから、

 I do not like it.   I hate it.    などで代用できます。要するに楽しくない気持ちが出ればそれで十分です。

思いついたことをすぐに英語にしてみるのが大事なポイントです。

 

ひらめきがどうしても英語にならない場合もあるでしょう。その対策については後日お話しします。

 

「ひらめき」法は中学英語の復習です。

われわれは中学校で必要な英語の文型をほぼ学習しています。日常会話に必要な単語もだいたい習っているでしょう。英語を話すとは、その無限の組み合わせから一つを選ぶ作業です。

 

 例えば、ぼくが中学1年でごく最初に習ったセンテンスは

 This is a pen. 

 I have a book.   でした。

でも、現実には「これはペンです」というセンテンスをぼくは生涯で一度もしゃべったことはありません。「本を1冊持っています」も同様にありません。

 

ただし、これらの文型を利用して、penや bookの代わりに別の単語を入れ替えれば、

This is my wife, Hanako.  こちらは妻の花子です。

He has money.  彼は金持ちだ。

となります。これらの英文は何度も言ったことがあります。

 

既に頭の中にある文型に、既に頭の中にある単語を入れたら、それで自分の言いたいことが英語が言えるはずです。今それがすぐに口から出て来ないのは練習量が足りないからです。ひらめき法で練習をすれば、話せるようになるわけです。

 

最初はどうしても頭の中で翻訳作文してしまいます。作文に時間がかかり、話の間が恐ろしく長くなります。それでも仕方がないでしょう。でも繰り返していると、その時間は短くなり、そのうちには日本語を通さずに英語で考えるようになるのです。

 

「英語で考える」ことができるカラクリ

ここで疑問が出てくるかもしれません。

 「反復練習で口から早く出てくるようになるのは分かる。でも、間が短くなったからといって、英語で考えるようになるとはどうしても思えない。」といったものです。

ぎこちない間が短くなるのはスピードの改善ですが、英語で考えるようになるのは質的な変化だというものです。われわれは努力すれば、だんだん速く走れるようになりますが、それでもチーターにはなれない、といった理屈です。

 

これについては前回の第6回「『日本語で考えてはいけない』を科学する」で触れました。

ある思いを言葉にしようとした場合に、現状では語彙も文型も豊富な日本語を選択しています。日本語脳を選ぶわけです。これに対して、今は眠っているままになっている英語の文型や語彙が頭の中で活気づいてくれば、英語脳が育ち、それを選択するのが楽になります。これが英語で考えるということです。

 

この練習はぼーっとした時間に行うのが良いと言いました。それには2つの理由があります。

 第1の理由はこうした時間に心に浮かぶ思いは「短い」ということです。

 

 先程の例の「心に浮かんだ風景」は3つのコメントから成っていました。

  「お腹がすいたなあ」

  「今日は10時から会議だ。退屈だなあ」

  「内緒でお菓子でも食べてようか」

  でした。

 

 これを1つにまとめると、

 「おなかがすいたから、10時からの退屈な会議の最中に内緒で何か食べていよう」 という文になります。

 

 文にすれば確かにこうなりますが、こうした複雑な思いはぼーっとした時間には浮かんできません。上のように、途切れ途切れの思いが次々に浮かんでくるはずです。これなら非常に短く単純なので、育ち始めたばかりの英語脳でも簡単に対処できます。長い考えを英語にしようとすると、どうしても日本語から翻訳してしまうのです。

 

 自分の奥にある感情を英語にすることはとても重要です。「退屈だなあ」と思ったら、その素直な感情を表わそうとして、自分の気持ちにぴったりくる英語を選ぼうとします。その結果、日本語ほど上手でなくても、英語でも自然な感じが伝わります。

 

「使える英語の語彙数が少ないから、どの表現がより自然なのかなんて分からない」とおっしゃるかたがいるでしょうが、銅メダルを目指しているうちは考えすぎないでください。数をこなしているうちに、自然にできるようになってきます。

 

 第2の利点はぼーっとしたときに思い浮かぶことは範囲が限られているということです。

話題で言えば、家族、友人、同僚のこと、身体の調子、1日の予定。形容詞で言えば、楽しい、つらい、嫌だ、といった感情の範囲に収まってしまいます。これに対して、哲学、科学技術、文学といったことに思いが及ぶことはごくまれでしょう。ぼくはこのことに気づいたとき、「自分の関心事ってなんと範囲が狭いんだろう」と苦笑しました。

ひらめき法の長所は意外と長い時間、英語に浸ることができる点にあります。

英語をうまくなろうと思ったら、できるだけ長い時間、英語に浸ることです。もしこれから一生、全く日本語は使わないで、英語だけで暮らそうと心に決めたかたが居るなら、その人はかなり英語がうまくなるでしょう。

逆に効果が薄いのは、英語を学んでいるつもりでも、本当は日本語を見ているような場合です。英語の教材テキストは、例題の英文以外はだいたい日本語でできています。なので、テキストを見ている間、日本語で考えている時間がけっこうあります。英語教室も先生が日本語で説明している場合は、日本語脳が働く時間が長くなってしまいます。

これに対して、このひらめき英語をやっているときは、すべて英語の時間です。

 

 「さあ、英語脳の時間だ。日本語脳は使わないぞ」と思って始めてみてください。最初のうちは、「日本語で考えてはいけない」と思うあまり、緊張して何も考えが浮かんでこないこともあります。それでは元も子もないので、適当に気持ちを緩めて行うのがいいでしょう。

 

 「この方法をどの程度の期間続ければ、英語がすらすら出てくるようになるでしょうか」という質問を受けます。これは、それを始める人の現在の英語力によって違いますが、英検2級だったぼくは半年でだいたい思ったことがなんとか言葉になるようになりました。ぼくはこの半年は通勤する間(電車往復で20分)だけ、このひらめき法をやっていました。

 「1日20分だけ、半年でそんなにできるの?」と疑問に思うかもしれませんが、本当です。ただし、上記で述べたようにごく限られた話題の短い文だけです。

 

 ぼくはこの方法を誰に教わるというわけでもなく、ぼーっとしているくらいなら、英語を勉強したほうがいいという単純な動機で始めたのです。この方法だと自分のペースで少しずつ進むので、高いハードルを感じないで済みます。そのうち、「あっ、これも言えた」と喜びがわいてきます。今まで言えなかったことが英語で言えるようになると、真白な便箋に英語のメッセージを綴ったような感覚が生まれます。

 

 ひらめき法を始めて半年後、自分も頑張れば英語ができるようになるぞという希望が出てきました。ここまで来たら、銅メダルの入口に立ったと言えます。皆さんも半年後には同じような気持ちになるでしょう。

 

 ひらめき法を行うにあたっては文型や単語にノウハウがあります。それは次週以降順次お話しいたします。

スペインにあった「幸せな職場」

ユーロ圏は4月、過去最悪の失業率を更新しました。

その中、ユーロ圏で4位の経済大国、スペインの失業率は最悪のギリシャに次いで

30%に迫る勢いです。

 

ところが、そのスペインで成長を続けている企業があるのです。

失業率が25%を超えた昨年、4000人もの新規雇用を果たした大手スーパーチェーン

「メルカドーナ」です。

2002年に9.4%だった市場シェアは19.2%にまで拡大しています。

 

いったい、メルカドーナはなぜ強いのか。

 

まず映像もご覧ください。

http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/globalwatch/post_38198/

 

 

幹部候補生の研修会場で、その場にいた31歳の男性幹部候補生に、

「ここで働いていて、ハッピーですか?」 と質問を投げかけると、

彼は「もちろんですよ!」と満面の笑顔で即答しました。

 

満面の笑顔で「幸せです」と話す男性社員

 

そこに垣間見えたのは、失業に怯え、将来に不安を抱えるスペイン市民の姿ではなく、

会社の未来を担う自信と誠意に満ち溢れた社員の姿でした。

 

メルカドーナの強さの秘密は従業員にあります。

昨年入社した4000人に加え、既存の従業員7万人の全てが正社員です。

スペインの労働組合によると、ほかの小売りチェーンでは

平均して6割ほどの従業員がパートタイム契約で、

その実態と比較すれば、メルカドーナは極めて特異な存在なのです。

 

しかも、メルカドーナの賃金は競合他社に比べて割高で、

入社4年目の販売員1人当たりの月給は国内平均より

400ユーロ(約5万1000円)ほど高いのです。

 

社員研修にかける費用も年間4400万ユーロ(約56億1000万円)、

時間にして200万時間で、米国の一般的な同業他社と比べて、

研修に約20倍の投資を行っているとも言われています。

 

当然のことながら、不透明な雇用体系やサービス残業など、

働く人間が会社の姿勢を疑問に抱くような制度も存在していません。

 

去年、メルカド―ナは目標達成を果たした社員たちに対し、

総額で2億4000万ユーロ(約304億円)のボーナスを支給しました。

その上、政府が引き上げた所得税増税分を補填する目的で、

追加で2300万ユーロ(約29億円)を支払っているのです。

 

メルカドーナは1977年、精肉店から転じてスーパーとなったファミリー企業で、

1981年には8店しかなかったのですが、30年後の現在では

全国で1400店以上にまで拡大しています。

 

転機が訪れたのは1990年代初頭のことです。

仏カルフールなど海外の大手小売りの参入が相次ぎ、競争が激化しました。

これに対し、メルカドーナのホアン・ロイグ社長がとった対策は思い切ったものでした。

 

1995年から99年にかけ、当時、従業員の6割ほどを占めていたパート社員全員を

正社員にしたのです。

 

きっかけは、社長のロイグ氏が店舗を訪れた際に目撃した衝撃的な現実でした。

商品を持ち帰るパート社員が多く、カバンを勤務終了後にチェックした姿です。

 

「雇用が安定すれば、従業員は積極的に仕事に携わってくれる。

社員に求めているのは単純労働ではなく、心や頭脳を駆使してアイデアを生み、

仕事に情熱と努力を注ぐことだ」という方針からです。

 

厚遇の例をいくつか挙げてみます。

 

まず、メルカドーナの社員は7割近くが女性ですが、

一部の主要都市では、社員の子供は同社が運営する幼稚園に無償で通うことができます。

 

また、産休については公的に定められた4カ月に加えて、

会社がさらに1カ月長く休むことを認めています。

 

さらに、従業員の生活と労働のバランスを保つ目的で、日曜に営業は行いません。

勤務地は、社員の自宅から最も近い場所と決められています

 

例えば、部下が地元の祭りに参加したいという理由で1時間の早退を求めた場合でも、

快くそれを許している。

その代わり、繁忙期には、急な応援の要請にも応じてもらっているそうです。

 

日本ではあまり考えられない理由で会社を早退する場合でも、

気持ちよくそれを許すことで、いざという時には積極的に

社員に助けてもらっている姿がありました。

 

仕事と生活のバランスを認める事が、社員のモチベーションを高く保つ。

 

これを敏感に察知するのは、ほかでもない消費者です。

 

店舗でインタビューをした複数の客は

「メルカドーナでの買い物は、家にいるような居心地の良さ」

「ここで働く人を見ていると、みんな幸せそうに見える。」

「働く人が快適な思いをしていると、客への気配りにも表れる」と語ってくれました。

 

 

もし、この不況下で、メルカドーナがコストカットの一環で人減らしを始めていれば、

社員のやる気も削がれて、さらなる悪循環に陥っていたでしょう。

会社は、財産である社員に対しては経費削減を行わないのだといいます。

 

社長のロイグ氏はパート社員の正社員化に加えて、

同社の最重要課題を「顧客満足度の向上」と明確にしました。

それ以来、メルカドーナでは顧客を「ボス」と位置付けています。

 

いかに客に満足してもらえる商品やサービスを提供するか、

これがメルカドーナ全社員への至上命令なのです。

 

ではいかに「ボス」を満足させるのか。

 

店を訪ねると、店員はその場所まで一緒に行って商品を指し示すだけでなく、

調理の仕方まで説明しています。

 

客のニーズに応えるため、130人以上の「モニター」と呼ばれる

顧客調査を専門にする社員たちがいます。

 

ある日、来店客の1人が「メルカドーナ製の化粧用コットンの綿がほつれやすく、

気に入らない」と店員に訴える場面に遭遇。

店舗に併設された「イノベーション・センター」に案内し、「ボス(顧客)」の声に

耳を傾けて商品の改善策を探るのです。

 

また、昨今の危機下では、当然ながら消費者の関心はもっぱら価格に集まる。

メルカドーナは、一時的な「お買い得商品」を出すよりも「常に低価格」を目指し、

商品の4割ほどを自社ブランド製品にしています。

 

メルカドーナは商品開発において、容赦ないコスト削減を行うことで知られており、

「ボス」の意見を基に良質な商品を瞬時に開発・商品化し、

かつ低価格を維持し続けるには、取引先との信頼関係が不可欠です。

 

そのため、メルカドーナは取引先と長期契約を結ぶなどして、

無理も聞いてもらうのだそうです。

 

メルカドーナのビジネスモデルは5つの柱で支えられている。

(1)客である「ボス」、

(2)事業を担う従業員、

(3)取引先、

(4)社会、

(5)株主    だ。

 

ここがメルカドーナの面白いところ。

他社のように、まず株主を第一と捉え、そこからビジネスモデルを構築するのではなく、

あくまでも客、そして従業員を大事にしています。

そうすることが、最終的に株主の満足にもつながると信じているとのこと。

 

 

ただし、この「メルカドーナモデル」を他社にも導入することで

スペイン経済を救えるかといえば、そうでもありません。

 

まず、このモデルを構築するには取引先との信頼関係の強化など、

少なくとも数年を要するものです。

さらに、会社の経営状態が健全なうちは機能するモデルですが、

業績が悪化に転じた場合には、すべてを正社員だけで賄うのは

困難だとの指摘もあります。

 

つまり、業績が成長し続けなければ回らない仕組みというわけです。

 

景気低迷の続くスペイン経済にあって、「メルカドーナの幸せな職場」は

どこまで快進撃を続けることができるでしょうか。

【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!Vol.6

「日本語で考えてはいけない」を科学する

今日のポイント

・「英語を話すとき、どうしても日本語訳をしてしまう」と思っている人でも、英語脳が既にかなりできている可能性がある。

・英単語スピーキングが英語脳を育てる最もやさしい方法だ。

 

「英語で考えるなんてできない」と思っていないでしょうか。苦手意識の強い人でも、実は英語で考えることを既に始めています。それに気づかないだけです。英語脳を育てる最も効果的な方法は英単語スピーキングです。

 

例えば、突然、誰かに殴られたとします。痛い! そのときあなたはどう言うでしょうか?

  「いてててて!」   みたいなカンジでしょう。

これは考えてしゃべっていません。条件反射しているだけです。

 

ぼくがアメリカでテレビドラマを見たときに、頭を殴られた主人公は

  「アウ アウ アウ アウ!」  と言っていました。「なんだかふざけているみたいだ。 痛さを感じているなんて思えないよ」

ぼくには「アウ アウ アウ アウ!」が 「痛い!」には聞こえなかったのです。

 

 「英会話がうまくなるためには日本語抜きに英語で考えなくてはいけない」とよく言われます。その通りです。しかし、どんなに英語がうまくなったとしても、ぼくらは「アウ アウ アウ アウ!」とは言わないでしょう。自分の核にあたる部分は日本語で出来上がっていて、それを変えることはできないのです。

この話をすると「芯が日本語でできているのだから、英語で考えるなんて至難の技だ」と思う方が多いのではないでしょうか。

 

 われわれが英語を話す際には3つの段階を踏んでいると考えられます。第1に「ある思いが心に浮かぶ」段階です。先程の「痛い」もそうですが、喜びや悲しみ、驚き、賛同、賞賛、軽蔑などのあらゆる感情が起きる段階です。また、古い記憶が蘇ったり、新しいアイデアが生まれたりする段階です。

 

 それを日本語化するのが第2の段階です。日本語脳の出番です。ある考えが第1の段階にとどまっていて、まだ第2の言葉の段階に達していないことがあります。それは「喉元まで出かかっているんだけど」というときです。

 

 この日本語を英語化するのが第3段階目になります。これが翻訳です。当然ですが、外国語を話さない人には第3段階はありません。

 

 英会話の理想は第1段階から第3段階へ直接進むことです。これは英語脳が働いていないとできません。この場合、言葉の置き換えがなく、スムーズに言葉が出てくるので自然な会話になります。

 

 ここまでお話しすれば、通じない英語を話してしまう際には2種類あることが分かると思います。

 

 すなわち、

 (1)第2段階から第3段階へと進む際に起こる間違い。翻訳ミス。

 (2)第1段階から第3段階へと直接進むものの (英語脳は働いているものの)

  第1段階が日本人の発想であるがゆえに起こる間違いです。

 

実際のところ、間違いは日本語から英語へと翻訳しているときに起きる場合が多いです。

 

ぼくの翻訳ミスの代表例をお話しします。

外国人と夜遅くまで働いていて、「もう終わりにしよう。帰ろうよ」と言うつもりでした。

 Let’s finish it. Let’s go home.

と言ったのです。すると、同僚はきょとんとし顔をしてぼくを見つめました。「帰ろうって言ったんだよね」と念を押したのです。

 

 後で分かったのは

 Finish it   は「仕事を仕上げてしまおう」という意味だったのです。

 

正反対のことを同時に言えば、同僚が当惑するのは当然でした。

この間違いは、ぼくの考えをまず「終わりにする」という日本語にし、それを英語に翻訳しようとしたのがいけませんでした。

 

もし、仕事を終わりにしたい気持ちがそのまま第3段階へ進んで言葉になった場合は

 Let’s stop working.   と言ったはずです。

さらにこなれた英語が使えたら、

 Let’s call it a day.    と言えたはずです。

 

英語上級者には、日本語から英語に翻訳して話している人がすぐに分かります。言葉として出てくる英語が日本語的な言い回しになっているからです。

 

 もう一つの間違いは上記の(2)で、第1段階が日本人の発想であるがゆえに起きるものです。

 

 一例を挙げましょう。

 日本人は友人に別れ際に「がんばってね」と言うことがあります。試験前だとか交渉ごとの前など特に頑張らなくてはならない事情がない場合でも、多くの人がこう言うでしょう。おおげさな言い方ですが、人生を前向きにがんばって生きてほしい、といった気持ちが相手に対して働くのだと思います。

 この気持ちが心に浮かんだときに、ぼくはそれを英語でこう表わしました。

 Do your best.

 ところが、米国人の友人は変な顔をしたのです。ぼくはその反応を見て、「また日本語のへたな英訳をしちゃったかな?」と内心思いました。

 

これも後で分かったのですが、英米人には人から「がんばってね」と言われる習慣がないのです。もし別れ際に何か言うならば、

 Take it easy.    となります。

これは「気楽にやってよ」という意味で、アメリカ人同士が別れ際によく使います。これも相手への気遣いですから、「がんばってね」の最も的確な訳語です。しかし、これは知識として知っているから出てくる言葉であって、日本人の心情を表わした言い回しではありません。

 

ぼくが“Do your best.”と口走ったのは、日本語を英訳したのではなく、自分の心情が英語で出て来たわけです。先ほどの頭の構造から説明すると、第1段階から即第3段階へ進んだのですが、第1段階が日本語的な発想だったために、通じない英語となったわけです。

 

もう一つの例は、ぼくがアナリストとしてアメリカの会社のCEOに業績について取材していたときの話です。

  「御社はここ数年業績がいいですね」  と前置きを述べてから

  「御社の業績の先行きに不安があるような気がするのですが」  と質問を始めました。

 

 CEOは答え始める前にどこか逡巡したところがあったように見えました。

 後で考えると、ぼくが「業績が良い」と褒めたのに、その次に「業績に不安がある」と言ったため、「こいつは矛盾した話をしている」と思われたようでした。

 

 日本では話の初めに相手を持ち上げてから話題に入るのが当たり前です。しかし、そういう発想は英米にはありません。CEOはぼくの「口上」に当たる部分も本題の一部だと解釈したわけです。アメリカ人同僚は単刀直入に聞くべき質問だけを投げかけていました。

 

 日本語を訳して話したわけではなかったので、英語自体に問題はありませんでした。ただ、源にある第1段階が日本語で発想しているために、アメリカ人には理解できない英語になってしまったわけです。

 

 第1段階に関係するミスは日本人をやめない以上、完全になおるものではありません。ここまで自分を外国人化する必要はないのです。ここは開き直っていいところです。“間違い英語”のある部分が発想そのものに起因していることに気づいてから、ぼくは自分の英語力に自信が出てきました。それまでは「自分はまだまだ日本語で考えてから英訳している場合が多い」と反省しすぎていました。

 

 英語がうまくなるほど日本語の助けなしに英語を話すことができます。これは英語脳が育ってくるからです。銅メダルではまだまだ日本語からの翻訳が必要です。通訳レベルの語学力になれば、日本語はかなり不要になりますが、それでも難しい局面では日本語で考え直してから、「ああ。そういう意味だったのか」と理解し、その上で英語を話します。日本語が介在する割合は少ないですが、全くゼロではありません。達人レベルになれば、日本語で考えることは一切しなくなります。

 

 従来の考え方と大きく違う点があります。これまでの考え方は「ある程度の英語力にならないと英語で考えることはできない」というものでした。その「ある程度」とはとてつもなく高いレベルで、留学を2~3年済ませたようなレベルです。つまり、簡単には英語で考えることができないというものです。

 

 青い絵具に赤い色を少しずつ混ぜていくとき、かなりの量の赤い絵具を混ぜたときに初めて、「紫色になってきた」と認識されるのと似ています。それまでは赤みがかっているものの、青色のままだと見られます。

 

 これに対して、ぼくはABCを習い始めたときから「英語で考える」範囲が徐々に増えていると思っています。日本語の基本部分があるために最初は英語脳が全体に占める割合が小さくて、目立たないですが、まったく「ない」のではありません。英語表現を一つ覚えれば、その分だけ英語力がついているはずです。

 

 絵具で言えば、赤い絵具の最初の1滴を加えたときから、青い絵具と赤い絵具は混ざり始めているのです。他人の目に自分の英語力がどう映るかは別として、自分の中で英語脳は少しずつ育っているのです。

 どのようにしたら英語脳が育ちやすいか? これが、みなさんの重大な関心事項だと思います。ぼくは前回お話しした英単語スピーキングが最も簡単な方法だと思っています。

 前回同様、「駅に行く道を教えてください」を用いて考えてみましょう。

 「そうだ、駅がどこか聞こう」と思った瞬間に

 Station where 

  が出てくるとすれば、それは100%英語で考えたことになるのではないでしょうか。100%とは誤解のある言い方でした。英語化できない基本部分を除いた上での100%の英語化です。

 

 もし、この際に「駅へ・行く・道を・教えて・下さい。」とそれぞれの部位に分けて英訳しているとしたら、これは完全に日本語の英訳です。

 

 ぼくが言いたいことは

 Station Where    と口から出て来た人の方が

 Could you tell me the way to the station?

  と日本語を英訳して話した人より英語脳が育っているとうことです。

 

 まずはこの“Station where”がすぐに口をついて出てくるようにすべきです。

 

 ただし、英単語スピーキングは通じる英語ですが、まだ「点」の英語です。Stationも点ならば Whereも点です。この二つをつなぐことができれば、「点」が「線」になり、文になります。現時点では、広い日本語脳の中に英語脳が「点」として存在しているだけです。次の目標はこの英語脳の割合を少しずつ大きくしていくことです。

 その方法論は次のレッスンで学びます。

お酒が生んだ「消毒液ビジネス」

アフリカで環境衛生ビジネスに乗り出したのが、 手洗い用のせっけん液やアルコール消毒液などを開発・販売するサラヤです。

開発途上国では現在、衛生環境が原因で、5歳未満の子供が年間880万人死亡しており、 せっけんによる手洗いによって約100万人の命が救われると言われています。

病院での院内感染や術後の感染症による死亡例も多く、 衛生環境の改善が課題となっているのです。

サラヤのアフリカ進出のきっかけは、国連が「国際衛生年」と定めた2008年。 国連は、10月15日を「国際手洗いの日」と定め、ユニセフ(国連児童基金)を中心に、 各国で衛生習慣を広めるプロジェクトを進めていました。 同社はこれに同調し、販売する衛生商品の売上の1%を 日本ユニセフ協会を通じて寄付し、 ユニセフがウガンダで展開する手洗いの普及活動を 支援する「100万人の手洗いプロジェクト」を開始しました。

そして、寄付の金額目標を3年間で3000億円としました。

同社はこの活動を、寄付活動だけにとどまるつもりはありませんでした。 アフリカにおけるビジネスにつなげたいという考えが当初からあったのです。

ただ、アフリカといっても国によって様子はさまざまです。 治安が悪かったり政治リスクを抱えている国も多く、 電気や水道などの生活インフラが整っていないところもあります。

そうした情報をもたない状態で現地に参入するのはリスクが大きすぎます。 そこで同社は、ユニセフなどの国際機関を「味方につける」戦略をとったのです。

ユニセフや現地NGOのスタッフの支援を受け、実際にウガンダの村落や学校に出向いて、 石けんを使った正しい手洗いの方法を教えて回る活動を開始しました。 更家悠介社長を先頭としたサラヤ社員のプロジェクトチームが、 手洗いの普及活動をしながら現地の学校、病院、自治体などに サラヤの消毒液を紹介していったのです。

ただし、アフリカで活動を始めた当初から、ビジネスにつながる アイデアがあったわけではありません。 手洗い支援活動を続けながら、ビジネス化のアイデアを模索していったのです。

そんな中、同社マーケティング本部の代島裕世本部長が現地に入って気付いたのが、 ウガンダでは酒類の販売が盛んだったことです。 現地の人もよく酒を飲みます。 調べてみると、アルコールを生産するための蒸留技術を持つ企業が ウガンダにあることがわかりました。

代島本部長の頭に、消毒液用のアルコールを現地で作り、 医療現場向けに販売するアイデアが浮かんだのです。 国内で販売している消毒液はコストが高く、ウガンダでの販売は断念していました。

しかし、現地で低コストに消毒液が作れるとなればビジネスとして成立します。 病院などの医療現場を対象にすれば、定期的な売り上げが見込めると判断しました。 販売先となる医療現場は手洗い活動で培った人脈を活用できます。

そこで、2011年5月、ウガンダに現地法人「サラヤ・イースト・アフリカ」を設立して 事業化の準備を整えたのです。

今年中に、現地の大手砂糖製造メーカー「カキラ・シュガー」と共同で、 消毒用アルコールの製造工場を設立する予定です。

代島部長は、「ライバルがいない今こそ参入のチャンス。 『手洗いはサラヤ』と言われるくらいにしたい」と意気込んでいます。 2015年度までに黒字化を目指す計画だそうです。

【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!Vol.5

ここまで簡単!英単語スピーキング

今日のポイント

・最も簡単な英会話は必須語(これだけはないと意味が通じない最低限の単語)を並べるだけの単語スピーキングだ。これは世界標準の英語だし、ビジネスでも有効だ。

 

今日は、いよいよ最初のレッスンです。あまりにやさしいので、「これではプライドが許さない」と思われそうなほどです。しかし、これは世界標準の英語です。大事なことは、これがすぐに口をついて出てくるかどうかです。

 

この英語がすぐに出てきますか?

 

問題:以下の日本語を見て、すぐに英語になるかどうか試してみてください。

 

「駅に行く道を教えて下さい」

 もし、ここで「どう言うのだっけ?」と一瞬でも考えてしまった方にとって、今日のレッスンは十分学ぶ価値があります。

 

 ぼくが思いつくままに書いてみます。

 May I ask you how to go to the station?

 Can you let me know how I can get to the station?

 Could you tell me the way to the station?

 Excuse me, where is the station?

 

 まず大事なことは、英作文の試験を受けているのではないのですから、日本語と英語の意味がだいたい同じになれば十分だということです。

 

駅   → the station

行く道 → the road to

教えて → teach

ください→ Please

 

 のように考えて、

 Please teach the road to the station.

 としなくてもいいんです。

 

というよりも、この英語は通じますが、正しくはありません。

今日ぼくが紹介する「正解」英語の方がもっと簡単で、よく通じます。

 

なぜ正しくないセンテンスができてしまったかというと、日本語と英語の単語を1:1に置き換えているからです。これは最もやってはいけないアプローチです。

ぼくがこの連載で示す方法論に従っていけば、「日本語から英語をつくり出す」という従来のやり方を徐々にしないようになってきます。

 

英語を学び始めたばかりの人が注意すべき簡単なルールがあります。

それは、「必須語を探せ」というものです。

 

日本文でも英文でも文の中には必須の単語とそれ以外の、言わば、飾りの単語があります。ぼくが書いた上の4つの英文をよく見てください。すべての文に共通の単語は一つしかありません。それはStationです。それ以外は、「どこですか」に当たる部分が異なる表現で出てきます。

 

つまり、

 必須語: 駅 どこ

 となります。それ以外は飾りです。

 

だから、もし外国で道を聞くはめになったら、

 “Station Where”

 でいいわけです。

 

これがぼくの薦める英単語スピーキングです。

道に迷ったときに最初に頭に思い浮かぶ単語は行き先(この場合は駅)でしょう。思い浮かんだことをさっと言うのです。

 

デパートやお店の中だったら、「トイレはどこですか?」と聞く際に”Restrooms?”だけ言えれば完璧です。もちろん相手への礼儀として、”Excuse me.”くらいは添えた方がいいですが、思いつかなかったら、なくてもかまいません。

 

ぼくがパリを旅したときはこれで乗り切りました。ぼくはフランス語は「こんにちは」と「ありがとう」しか知りません。数も1と2しか数えることができません。あるとき、道に迷い、シャゼリゼ通りがどの方角にあるか全く分からなくなってしまいました。四つ辻にお巡りさんが立っていたので、にこにこしながら近づきました。

 「ボンジュール。シャンゼリーゼ」

 と言って、ぼくは四つ辻のそれぞれの方向を順番に指さしました。つまり、シャンゼリーゼ通りの方向がどちらなのかを指さしてほしいと示したわけです。お巡りさんはにこにこしながら、左の方角を指差しました。ぼくは「メルシー」と言いました。お巡りさんもうれしそうでした。

ぼくの意図したところは100%通じたし、お巡りさんも「今日は道に迷った外人旅行者を助けた」と思ったことでしょう。これは完璧に意思疎通ができた例です。

 

ただし、自分の行き先だけは誰も察してくれません。例えば、展望台に行きたい場合、展望台を英語でどう言うのか分からないと人は、場所を聞くことができません。必須語だけは英語で言えないと困る、ということです。しかし、それさえ言えればコミュニケ―ションは成立します。

 

「これはブロークン英語だ。これには抵抗があるなあ」と思う方がいるかもしれません。

「ブロークン」という言い方をしてしまうと響きが悪いのは確かです。しかし、そう考える方は外聞を気にしすぎているからではないのでしょうか。読者のみなさんは、カタコト日本語の外国人に道を尋ねられた経験がおありでしょう。そのとき、「あの外国人の日本語はブロークンだった」と思うでしょうか。それより、「なんとか無事に目的地に着いてほしい」と思ったのではないでしょうか。

 

ここで紹介している英語は流暢(りゅうちょう)とはかけ離れた代物ですが、重要なことは、世界標準の英語だということです。

 

 米国、英国、カナダ、オーストリアなどの英語を母国語とする人口が4億人前後、英語を第2外国語として話す人が15億人前後いると言われています。後者の人たちの英語力の大多数はそんなものです。

 ぼくが住んでいたアラブ首長国連邦のアブダビ市にはバスや電車はありませんから、公共交通機関はタクシーだけです。タクシーのドライバーはみなパキスタン人で、客によってアラビア語と英語を使い分けてくれます。ただ、猛スピードで走る車を操るドライバーに対し、素早く正確に伝えなければ目的地にたどり着けません。

 

 「次の信号を右に曲がってください」

  は常套句でした。これはどう言うのでしょう?

 

 これは必須語を挙げてみれば簡単です。

  信号と右が必須です。

 

 したがって英語は

 “Signal Right”

  となります。

 

 なお、ここで「次の信号」の「次」を訳すつもりで、nextを言うと大変なことになってしまいます。目の前にある信号のその次の信号のことかと誤解するからです。

 

この英語はアラビアでは「正式」な英語でした。一緒に乗った友人のイギリス人も運転手にそう指示していました。ぼくはからかって

 

「お前のその英語、どうなっているの? 君はイギリス人だったっけ?」  と揶揄(やゆ)しました。

「これが、いちばん通じるんだよ」と、彼は言っていました。正統な英語をしゃべっても相手が理解できなければ意味がないのです。

 

それでも、何もここまでレベルを落とさなくてもいいんじゃないか。 Station WhereとかSignal rightではあまりに幼稚だ」

 と思う方がいらっしゃるかもしれません。

 

 前回申し上げたように、「駅に行く道を教えてください」を作文している間に、ぎこちない間が生じてしまうのが最も避けるべきことです。Station Whereは頭からすぐに出てくるでしょうから、「まず言っちゃえ」とぼくはアドバイスしているわけです。その方がずっと“会話らしい”会話になります。このレベルができたら、次の段階に進むことを考えればいいのではないでしょうか。

 

 ぼくが必須語スピーキングを勧める理由は、自分の失敗にあります。

 

 留学生だったころ、ぼくはコピーを取りたくて、コピー屋に入りました。自分の書いた論文のコピーを取っておきたかったからです。

Can you make one copy for each? (各ページを1枚ずつコピーしてください)

 

このようにすらすら英語が出てくればよかったのですが、ぼくは途中で言い淀んでしまいました。Forまで言ったときに、「あれ、この英語でよかったかな?」という不安が頭の中をよぎったのです。

 

店員はOKと言って奥に消えて行きました。

戻ってきた手には分厚いコピーを抱えていました。

Forで言葉を止めたばかりに、そこが強調され、4部コピーを取ってきたのです。

論文は20ページ。コピーは80ページ、合計100ページを抱えるようにして店を出ました。店を出る際に別の客の声が聞こえました。

 

“Two, please.”

アメリカ人の英語を聞いて、コピーを頼むときは数字だけ言えばいいということが分かったのです。この場合、必須語はコピー枚数だけです。

 

 「日常会話はこの程度でも良いだろうが、正式な場面では役に立たないんじゃないか」と思う方もいるでしょう。もちろん晩さん会のような席では無理です。でも一般のビジネスでもこの程度の言葉の使い方で問題はありません。

 

ぼくは株式投資を仕事とするファンドマネージャですから、部下たちと日本の経済ニュースを日々共有し、それについて話し合ってきました。

 

「今日はいいニュースがあったよ。失業率が0.3%前月から下がったんだ」

これは、よくある部内での会話です。これを英語で言うとどうなるでしょうか。ぼくが実際に使っている表現そのままをここで書きます。

 

“Good news. Unemployment rate Down 0.3%”

 

 この中で必須単語は3語。「失業率」と「0.3%」と「下がった」だけです。プロ同士の間では0.3%が前月からの変化率を指すことはみな知っていますから訳出不要です。

 ていねいな人ならば、日本語と同じようにちゃんとした文で話すかもしれません。そういう人でも、もし「聞こえなかった。もう一度言ってよ」と言われたら、

 

“Unemployment Down 0.3”

 といった大事な個所だけを繰り返すでしょう。その際はrateも%もなくなっています。

 

 通訳をする場合も一言一句正確に訳す必要はありません。ぼくがあるプレゼンテーションの通訳を頼まれたとします。話し手が「みなさん、これから3つの大事なことをお話しします」と言い、それを訳すことになったとします。

 

 ぼくが訳せば、

 “Three things.”

  だけです。

 

 上の日本文で必須語は「3つ」だけです。このセンテンスを語感を大切にして日本語に戻すと、「ポイントは3つ」くらいになるでしょう。聞き手にはそう聞こえています。

 

 聞き手の外国人は「3つのポイントは具体的には何か」に興味があるのであって、早く次が聞きたいのです。そうでなくても、話し手が日本語をしゃべっているときは呪文を聞いているようで退屈な時間です。だからここはさっと訳すのが最高です。

 

 どうして単語を並べただけでもビジネス上問題がないのか。有難いことに、それが英語の特性だからです。例えば、ビートルズの大ヒット曲は”Yesterday”。日本だったら「昨日」というタイトルでは売れないでしょう。これではあまりにそっけない感じです。同じような例に、ミュージカル「アニー」の代表曲 ”Tomorrow”があります。邦訳すれば、ただの「明日」で味気ない。「明日があるさ」になりそうです。

 

 米国で銀行やスーパーのレジの列に並んだことのある人は、大声で”Next!”と呼ばれた経験があるでしょう。これを「次!」と訳すと高飛車な姿勢に腹が立ちます。しかし、米国人には「お次の方」くらいに聞こえているはずです。英語では、単語だけでもそれ以上の意味を語っているように聞こえるのです。

 

 英単語スピーキングの良いところはすぐに英語が出てくることです。会話の流れを大切にできるところです。さらに、これができるようになれば、次の段階(単語だけでなく文が口から出てくる段階)につながっていくのです。つまり「点」の英語から「線」の英語へ成長していく準備段階でもあるのです。

 

 この英単語スピーキングが難しいと感じる方は、読者のみなさんの中には居ないでしょう。問題は、この英語でプライドが許すかどうかです。そこを超えれば、一歩踏み出したことになります。

 

 

 

【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!Vol.4

英会話の最大の障害を取り除く

今日のポイント

・英会話の最大の障壁はぎこちない「間」。

英文を考えてから口にするので、英語がすぐに言葉が出てこない。そのため、日本人同士の会話のような自然さが生まれない。日本人が何を考えているか分からないと思われてしまいます。

 

妻(または母、恋人)から小言を言われたとします。

もし、あなたが素直に「ごめん。ぼくが悪かった」と謝れば事は丸く収まります。ところが、人間はつい反論したくなってしまいます。

 

 ここで2つの反抗的な態度が考えられます。

 (1)「そんなこと言ったって、お前だって悪いじゃないか」と相手に大声で怒鳴り返す。

 (2)ただ、何も言わずに相手を無視する。

 

 さて、どちらがより険悪なムードにつながるでしょうか?

 

 みなさんの家族によってそれぞれ違うかもしれませんが、英米で絶対に取ってはいけない態度は(2)です。愛情の反対は憎悪ではなくて、無視だからです

 

 英語文化圏では話し合うのが人間関係の基本です。夫婦でも以心伝心ということはなく、何でも話して理解を深めるという発想です。

 

 これを象徴した表現があります。

  We need to talk. 話したいことがあるんだ。

 

これは深刻な話をしたい場合に使います。夫婦なら愛情にひびが入り始めているような場合です。職場なら上司が「お前は給与分の仕事をしていない」と警告をするような場合です。もちろんもっと軽く用いる場合もありますが、一般的には事の重大性を相手に認識してもらいたいときに使います。

 

 話し合いが始まったら、相手に腹蔵なく話します。お互いに自分の言い分をはっきりさせ、合意できるまで話すのです。この際は相手の目を見て話し、言葉を濁すような言い方をしてはいけません。

 

英米文化において、最もやってはいけないことは「コミュニケーションを切ること」であり、「言葉を濁す」ことです。これは程度の差こそあれ、日本語での会話でも同じことでしょう。

 「そんなことは言われなくても分かってる。俺はそんなことはしてないよ」

と、反論する方が大半ではないでしょうか。しかし、ぼくの見たところ、それがそうでもないようです。

 

もう少し正確に言いましょう。コミュニケーションを意識的に立ち切る人は少ないでしょう。でも、言葉を濁す人はけっこういます。と言うより、濁したつもりはなくても相手にそう受取られることをしてしまうことが多々あります。コミュニケーションを遅らせることがその代表例です。

 これだけの説明では分かりにくいでしょうから、具体例を挙げます。

 

恋人女性:「次はいつ会えるの?」

恋人男性:「金曜日はどう?」

 

これはありふれた2人の会話です。ごく自然です。しかし、次のように変わるとニュアンスが違って来ます。

 

恋人女性:「次はいつ会えるの?」

 恋人男性:「………………」と一瞬の間を置いてから「金曜日はどう?」

 

 この場合、敏感な女性だったら、「私たちの関係に何かひびでも入ったのかも」とまで感じるかもしれません。

 

同じように、夫に買物を頼む際に、

 「あなた、会社の帰りにお弁当買ってきて」  と一気に言わずに、

「あなた」

 で一呼吸置いてみてください。ほんのちょっとの間です。「会社の帰りに……」のセリフが始まらないうちに、夫ははっとした顔でこちらを見るでしょう。何か重大な話が始まるかと思うからです。

 

 会話では相手が何か言ったら、自分が即、何か返すのが原則です。そこで一呼吸置いたら、そこには何らかの意味があると解釈されてしまいます。

みなさんは英会話で同じことをやっていないでしょうか。

 

「自分はできるだけすぐに答えているよ。一呼吸なんて置いていない」とおっしゃる方も、もう一度自分の話し方を思い出してみてください。

 

間が長いと怖い人に思われるかも

 

 外人から何か言われた場合、

 (1)まず、相手が何を言ったか日本語で理解しようとする

 (2)次に、自分が何を言おうかと、まずは日本語で考える

 (3)それを英訳する

  というプロセスを踏んでいるのではないでしょうか。

 

このプロセスにかかる時間はほんの少しかもしれません。でも、国際電話を思い出してみてください。自分が何か言ったあとに相手の反応が遅れた経験はないでしょうか。遅れたといっても1秒もない程度の間です。それでも市内通話と比べてなんだか話しにくく感じます。

 

 よく知った仲の外国人なら、会話中に多少間があいても「英語が出てこないんだろう」と思ってくれるでしょう。でも、これが初対面だとそうはいきません。

 

 大学生のころ、友人3人とぼくの合計4人で初めての海外旅行に出かけ、サンフランシスコに行きました。「シスコの地図でも買いたい」と友人が言うので、4人で近くの本屋に入りました。店員が「いらっしゃいませ」と言いました。20歳くらいの可愛い白人の女の子でした。

 

 友人は「地図はないでしょうか」と言うつもりだったのですが、英語が出てきません。頭の中で用意したはずの英語がすぐには出てこなかったのです。黙って立っているだけでした。ぼくを含めた残りの3人もただ黙っていました。

 

 一瞬ですが、店員の顔が引きつっているようでした。彼女の立場に立ってこの状況を考えてみればその理由は分かります。日が暮れて狭い店内に、見知らぬ東洋人の男4人が黙って立ってこちらを見ているのです。店側の人間は自分ひとり。強盗かもしれないと思ったでしょう。

 

 ようやく友人の口から「地図が欲しいんです」と英語が出てきて、事態は収まりました。店員に笑顔が戻って地図売り場までぼくらを案内しました。黙っているだけで相手は恐怖心を持ってしまうのです。

 

ぎこちない間が生じてしまう最大の理由は語学力が不足しているからですが、それ以外に日本人特有の理由があるとぼくは考えています。日本人の長所が短所に化けるというものです。

 

 日本人の英語の力の中で秀でている力があります。それは文法です。

 

 アメリカ人ですら文法の苦手な人は少なくありません。ぼくが通っていた米国のビジネススクールには学生の発言の文法間違いを正している教授が居ました。学生たちは大学院まで来て、基礎教育の「しつけ」に近いような言葉の手直しに苦笑していました。ビジネススクールに進学するアメリカ人は教養のある連中ですから、一般人はなおさら文法に弱いと思っていいでしょう。

 

 諸外国から来た留学生の文法はさらにひどいものがあったようです。“あったようです”とあいまいな言い回しをしているのは、当時のぼくには留学生たちの英語が早口過ぎて聞きとれなかったからです。

 

 もう一つ、文法にかかわるエピソードを紹介しましょう。ぼくが入った米国の英語学校では、留学生たちは先生とも冗談を言い、友達同士はまるで母国語で話しているかのように楽しそうに振る舞っていました。クラス分けの結果、この人たちと同じクラスになったのですから、ぼくの実力は彼らと同じレベルなはずでした。

 

しかし、ぼくの実力は過大評価されていたのです。その理由は文法にありました。その英語学校は外国人の文法があまりにひどいので、試験で文法を重視していたのです。だから、ぼくだけでなく、ほとんど英語をしゃべれない日本人でも、文法の点が高いために実力が底上げされ、そのクラスに混じることになりました。

 

 欧州の人はもともと言葉が英語に近いですから、英語に抵抗感がなく上達が速い。反面、自国の言葉に近いという理由で、自分の国の言葉のつもりで英語を話してしまいます。これに対して、日本人はまるで違った言語体系ですから、「英語は文法から」と思っているのです。

 

 しかし、これは両刃の剣というやつです。当然のことながら潔癖なまでに自分が習った通りに英語を話そうとしてしまうからです。

 

 例えば、「三単現のS」という文法。

  Heのあとはdo notではなくて、そうだ、does notだったなと思い出すわけです。場合によっては途中までHe do not言ってしまってから思い出してHe does notと言い直します。思い出すのに時間がかかりますし、言い直せば会話は停滞してしまいます。

 

 日本語の例で考えてみれば、こんな言い直しが不要なのは明白です。

 

 「私は彼に夢中なの」と言おうとして、「彼に首っ引きなの」と言っても誰も気にならないでしょう。正しくは「首ったけ」です。けれど、そこに居る友人はどんな彼なのかだけに関心があるから、細かい表現にまで気が回らないのです。正しい言い回しに直していたら、会話のリズムが崩れてしまいます。

 

「日本人は何を考えているか分からない」と言われる理由は、

日本人は正確に言おうとしすぎなのではないでしょうか。英語を教える技術をもって世界中を渡り歩いている英語教師にとって最も不人気な行き先は日本です。授業が盛り上がらないからです。正確な言い回しを頭の中で固めるまでは口を開かないという態度で臨むので、日本人が集まる英会話教室は静寂に包まれます。ある英語教師は「日本は給与がいいから行く人は多いけど」と言っていました。

これと対照的に、正確さはおかまいなしなのがアラビアの人たち。英語の授業中、「文法などかまわずに、みなべらべらしゃべっている」とある英語教師が言っていました。そのままにしておくと、収拾がつかないくらいだそうです。

 

 病み上がりの人は周囲が気遣ってくれるように、英語が不得手の人には外人の方で気を回してくれます。日本に住む外人たちには「自分は日本語を話していない。日本人に英語で話してもらっている」という弱みがあるからです。こちらはそれに甘えてもっとおおらかにしゃべっても問題ありません。

 

 「日本人は何を考えているか分からない」と外国で評価を受けているのはご存じでしょう。私が住む国際都市・香港でも庶民の英語力は決して高くありません。アラビア人の英語はさらに褒められたものではありません。それでも日本人だけが得体のしれない生き物のように思われるにはそれなりの訳があるはずです。その一つが間の長さではないかとぼくは考えています。

 

 「そうは言ったって、相手の話を理解するのにも、自分がしゃべることを組み立てるのにも時間がかかるよ。日本語のようにすらすら出てこないよ」

  という反論で出てきそうです。

 

 ここで気づいていただきたいことは、「英会話も会話だ」ということです。会話はスムーズに流れてこそ楽しいものです。あなたの話をじっと待っている聞き手にだって、がまんの限界があります。それを避けるためには、ぎこちない間をあけないことが最も重要です。外人が「安心」して話せる人にならなくてはいけません。簡単には直すことはできないでしょうが、「ぎこちない間が最大の敵」と分かれば、われわれも対処のしようがあるはずです。

 

 ぎこちない間を完璧になくすことは初期の段階ではあり得ないでしょう。それでも、次回からお話する方法を身に着ければすぐにしゃべれるし、相手に通じるようになります。「しゃべれるし通じるぞ」と思えるようになれば自信が付きます。外人からも好感をもたれ、会話が弾むのではないでしょうか。

 

【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法! Vol.3

銅メダル英語でここまでしゃべれる

今日のポイント

・銅メダル英語は英米人100点満点で20点の実力。それでも外人と一緒に仕事ができ、自分の意思を伝えられるレベル。

・20点でも会話ができるのは、コミュニケーションは語学力以外の力が大きいからだ。

 

ここで目指す銅メダル英語のレベルとは英米人を100点とすると20点なのです。こう言うと、全く正反対の2つの立場の驚きの声が上がってきそうです。

 

1)「これまで一生懸命やったとは言わないけど、中学、高校、大学と勉強してそれでも10点台なの?落ち込むなあ」

2)「たった、20点でいいの?それでしゃべれちゃうの? だったら、いけそうな気がする」

何事でも、初心者の方が実力の伸びを感じやすいものです。例えば、毎日1語ずつ英単語)を覚えたとします。100日目には100語が暗記できます。200日目には200語になります。この伸び率は2倍(100%増)です。

 

 100日ごとに覚えることのできる単語数はいつも一定で100語ですが、その後の伸び率は低くなります。

  200語→300語(伸び率50%)

  300語→400語(伸び率33%)

  400語→500語(伸び率20%)

 

といった具合です。上級になるほど伸びが感じにくくなるものです。

ということは、80点が目標なら到達は厳しいですが、20点が目標なら難しくないという理屈が成り立ちます。

 

銅メダル英語は20点を目指すものですが、それでも以下のことができるようになります。

・外人に自分の言いたいことを伝えられる

 ・外人と一緒に仕事ができる

 ・海外出張や英語のプレゼンテーションができる

 ・海外の大学や大学院に行くことができる最低限のレベル

 ・現在、海外駐在している人の英語力

 ・「英語がうまい」と、はったりを張ることができる

 

 英検だったら2級程度、TOEICなら600点くらいから銅メダル英語になることができます(つまり、英検2級なら英語力は20点程度です)。

 

 「自分は英検2級だけど、外人が来たら逃げ出したくなっちゃうよ。自分が銅メダルだとはまるで思えない」と、思う方がほとんどではないでしょうか。

 

 ここが大事なところです。

 

 最低でも英検2級程度の力がないと銅メダルには達しません。かといって、英検2級の人がすべて銅メダルかというと、これは違います。この中でノウハウを身につけた人だけが銅メダルを手にできるのです(なお、このコラムは現在英検2級に到達していない人でも、これからお話しする学習方法で学び続ければ、銅メダルになれるように構成されています)。

 

 なぜ、同じ英検2級でも銅メダルになれる人となれない人が出てくるのか? それは、英語の力に2つの軸があることで説明できます。「英語ができる」というY軸と「話が通じる」というX軸です。

 

 図式的に言うと、

 ・英語がうまく、話が通じる

 ・英語が下手で、話が通じない

  というごく普通のパターン以外に

 

・英語がうまくても、話が通じない

 ・英語が下手でも、話が通じる

  のパターンがあります。

 

銅メダルを目指すということは、実力自体を伸ばすのではなくて、実力はそのままで、話を通じさせるようにすることです。

 

どうして20点でも会話が成立するのか、もう一つの大きな秘密は「お互いが分かりあうのに言葉はそれほど重要な要素ではない」ということにあります。

 

 みなさんも外人の話が分かったという場合に、聞き取れた英単語をつなぎ合わせて類推しただけではないということです。雰囲気でなんとなく理解できたのです。

 

「コミュニケ―ションは言葉だけじゃない」ことにぼくが気づいたのは大学生のころでした。デパートの中をふらふら歩いていたら、「あなたの英語力を確かめませんか?」と言われたときです。よくある英語教材販売のセリフです。

 

 まずは、教材テープを聞くテスト。問題の3割もできませんでした。そのあと外人講師との会話レッスンです。外人講師の後について同じことを繰り返します。この出来も冴えませんでした。

 

 外人講師はぼくの英語力を批評して、「聞き取りもスピーキングも普通の大学生程度だから悪くないよ」と言っていました。それは社交辞令で、つまり、「下手だ」という意味でした。その通りだからしかたありません。

 

 最後に外人講師は「質問はある?」とぼくに聞きました。英語についての質問は特にありませんでしたが、ちょうどそのころ、米国の大統領選挙が近かったので、「大統領選挙は日本に居ても投票できるのですか?」と聞きました。

 

 すると、「できるよ」と言い、米国外での選挙の仕組みや自分が投票しようという候補の話、「アメリカは今変わらなくてはいけない」といった彼の持論を展開し始めました。ぼくが彼の話の中身が分かったのは妻の中国語と同じ原理だったのでしょう。ぼくは相槌として、「YES」と言うか、ただ頷くかしていました。

 

 彼は語り終えると、ぼくのスピーキングの力に最高点につけ直しました。「君の会話力を見直した。君はここ数週間に会ったレッスン生の中で最高に会話力がある」と言いました。

 

 ぼくが話したことと言えば、「大統領選挙は日本に居ても投票できるのですか?」だけです。後とは彼が自分で話し続けたにすぎません。誰だって自分が好きな話題を話せば楽しいはずですが、彼はプロの英語講師なのです。ぼくは彼の目を誤魔化すことができたのです。

 

 そのときは、どうしてぼくがそこまでの評価を受けたか分かりませんでした。

たぶん、彼は日々、日本人を相手に英語力判断をしていた。「質問は?」と聞いても誰も何も聞かなかったのでしょう。そうした日本人の気持ちはよく分かります。外人から返って来る答えがどうせ分からないだろうから黙っているのです。そんなわけで、彼はレッスン生と会話らしい会話を全くしていなかったのです。唯一ぼくだけが大統領選挙のことを聞いたのでしょう。

 

 すなわち、ぼくが「最高の会話力」だったのではなくて、ぼくは彼にとって「唯一の会話らしい会話」の相手だったのだと気づきました。

 

 それでもプロから「最高の会話レベル」と判断された事実は重いと思います。当時のぼくの英語力は10点台でしたが、当時から銅メダル英語が芽生えていたと言えるかもしれません。

 

 もし読者のみなさんの中に「私は人と話すのは嫌い。できるだけ人を避け、自分の殻に閉じこもっていたい」という方がいらっしゃったら、銅メダルの道は遠いと言わざるを得ないでしょう。同じ英検2級、1級でも銅メダルになれる人とそうでない人が出てくるのはこの辺りが大きな要因です。

 

 逆に人と接するのが楽しいという人は上達が速いでしょう。ぼくの外人講師とのやりとりを読んで、「自分も何か簡単な質問を投げかけてみるだろうなあ」と思った方は現在が英検3級レベルでも、銅メダル英語の素質があると言えます。

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