[林則行氏のコラムより]英語、本音の上達法!Vol.13
魔法のように会話を楽にする『get』
今日のポイント
・get+名詞で多くのことが言える。have+gotの形で覚えよう。
2つの意味を覚えるだけでGetはゲットできる
英文を簡単に組み立てるには動詞にGETを用いることがポイントです。たったの2つの意味を覚えるだけ使いこなせるようになります。今日はgetの使い方に精通してください。
Getは英語の万能薬
「getは万能だ」と言うと、「それは無茶だ。動詞はいっぱいある。getひとつで済むわけがない」と反論が出るでしょう。もちろんその通りですが、getを使うと、後の英語がスムーズに出てくるようになるところがミソです。
「I(私)で話し始めると、洗練された英語になる」で申し上げたように、人(IやYou)を主語にすると、後に続く英文が楽に口から出てきます。同様に、楽な言い回しをしたいなら動詞は「get」を使うべきです。
「英米人は日本人より本音を言わない」で書いたように、形容詞はgoodさえ知っていれば、当面は十分です。これと同様に、動詞にも中核を成す単語があります。それがgetです。
ある調査によれば、英文において最も頻出度が高い動詞はbe動詞。
第2位が do、第3位が get、 第4が have となっています。
そのあとにgo、 like、 think と続きます。
第2位のdoは疑問文で登場しますし、第4位のhaveは現在完了や仮定法に出てきます。これらは文法上使わざるを得ないものです。getにはこうした用法がないにもかかわらず、押しも押されもしない堂々3位なのです。
「頻度が多いということは『いろいろな局面で使うということだ』。だから意味がたくさんあって難しいのではないか」と考えるかたが居るでしょう。ぼくは、真実はこの逆だと思います。「頻度が多いほどその単語の持つ意味が薄くなる」のです。
ぼくは米(ご飯)は毎食でも口にすることができますが、好物のうなぎはいくら好きでも毎日は食べることはできません。米は味がほとんどないから毎日食べても平気なのです。同じように、ある単語が何回も出てくるということは、その言葉に意味がないからです。
その典型がbe動詞です。beにはさしたる意味はありません。
吾輩は猫である
I am a cat.
このamは、 吾輩=猫 2語を結びつけるだけの、数学の等号(=)のようなものです。
getも、これと似た意味の薄い単語です。おおまかに言えば、getはあるときはhave動詞とほぼ同じ意味になり、あるときはbe動詞と似た意味になります。
haveとbeは東西横綱とも言える代表的な動詞ですから、それら2つと同様の働きをするとなれば、getは横綱を超えた存在だと言えます。
Getの本質は「くっつく」です。
「getを覚えるだけでそのあとの英語がスムーズに出てくるってどういうこと?」と思うでしょう。それについてお話するには、まずgetの第1の意味をつかんでください。haveと同じ意味になる場合です。2つの意味のうち、こちらがより本質的で重要です。
主語+get+目的語(名詞)
という文があると、目的語が主語にくっつく感じです。
「本を買う(もらう)」と「犬を飼う」では日本語では全く違う動詞を使いますが、主語に対して目的語(この場合は本や犬)がくっつくイメージは同じです。離婚は相手が離れていくことですが、離婚という事実が自分にくっつく(バツイチの勲章がくっつく)のです。病気も自分にくっつきます。
1 get a book 本を買う(もらう)
2 get a dog 犬を飼う
3 get a taxi タクシーを捕まえる
4 get my wish 願いがかなう
5 get a divorce 離婚する
6 get a date デートする
7 get cancer 癌になる
8 get approval 許可される
9 get a shot 注射をする
10 get an appetite 食欲が出る
このgetには魔法のような力があります。どうしてかというと、他の動詞を使わないですむからです。それを理解するために、getを使わないで、いくつかの表現を言ってみましょう。
buy a book 本を買う
suffer from cancer 癌を患う
catch a taxi タクシーを捕まえる
となります。このように、通常は特定の動詞と特定の名詞が結びつきます。鍵と鍵穴を合わせるように、動詞と名詞を一つひとつ合わせていたら面倒です。これに対して、getはマスターキーのようなものです。getひとつでかなり間に合います。
イメージだけをいうなら、get+名詞は日本語の「名詞+やる」に近いかもしれません。例えば、「仕事をやった(片付けた)」とか「風邪をやった(かかった)」と言っても、相手に意図は伝わります。日本語の「やる」ほどではありませんが、英語のgetもやや上品さを欠いた表現になる場合があります。このためgetは会話では使っても、書き言葉では使わないのが普通です。
getが万能だというのは、getを使えば「だいたい」の意味が通じるということです。「だいたい」といのとは不正確になってしまう場合も含みます。
I’ve got~の形で使えるようにする
getは現在完了形で使われることが多いので、それも併せて覚えておきましょう。これはgetの本質にかかわることなので、現在完了についてここで説明します。
学校では現在完了は「過去より新しいが、現在よりは少し古い」と習いました。ぼくはこの説明が全く分かりませんでした。現在から1秒前でも、もうそれは過去になっているので、過去形にするべきだと思えたからです。
英語がしゃべれるようになって分かったのは、現在完了の本質が「継続性」にあることでした。
「ぼくは彼に賛成した/する。」という文を英語にする場合、
(1)「あのときは賛成だった。でも、今はもう反対だ。気が変った」と言うならば、継続性がないので過去形になります。
(2)「今もなお賛成だ」というなら、今も気持ちは継続していますから、現在完了になります。
(3)あのときも賛成だったけど、そのこととは別に、今の自分の賛成の気持ちを強く表わしたいなら、現在形になります。
会話中にこんなことを考えて、過去形、現在完了形、現在形を選ぶのは容易ではありません。だとしたら、現在完了は忘れた方がいいとぼくは思います。疑問文については優先順位が低いので、「疑問文は使わなくていい」と申し上げました。現在完了形も同様です。現在形と過去形だけで済ませましょう。
ただし、ここでは例外が一つだけあります。それがhave gotです。
ぼくがこれまで聞いてきた英語は圧倒的にhave gotの形が多かったです。現在形のgetはあまりお目にかかりません。
読者のみなさんには、have gotを使うことをお薦めします。これだけの差で英語がうまく聞えます。極端に言えば、第1の意味で使うgetはいつもhaveを伴うと考えていただいてかまいません。Getの例はすべてHave gotの形に書き換えらえると考えていただいてけっこうです。例えば、最初の例なら
I’ve got a book. 本は買ったよ(手元にあるよ。) といった調子です。
このhave gotは米語でよく出てくる表現で、しかも最近になって使用頻度が高まっているようです。
Getの第2の意味は「~するようになる」
Getが持つ2つ目の意味は、さらっとだけ見ておきます。意味は「~するようになる」というものです。冒頭で、be動詞と似た意味になる、と指摘した用法です。
get+形容詞
となっています。形容詞と書きましたが、過去分詞も入ります。
GET+形容詞で「~するようになる」
1 get hungry おなかがすく
2 get popular 人気が出る
3 get better よくなる
4 get suntanned 日焼けをする
5 get dressed 服を着る
6 get married 結婚する
7 get angry 怒る
8 get lonely 寂しくなる
9 get pregnant 妊娠する
10 get lost 道に迷う
このgetはisと交換してもあまり意味が変りません。例えば、
He got married. 結婚した
He is married. 結婚している
isが「~である」という意味であるのに対して、getは「~するようになる」ですから、当然意味が違います。しかし、だいたい同じような意味に取れます.
また、getには、その後にいろいろな前置詞がつく決まり文句があります。
get up 起きる
get on (電車に)乗る といった具合です。
これらも
I get up at 7. 7時に起床する
I am up at 7. 7時には起きている
I get on a train. 電車に乗る
I am on a train. 電車の中にいる
という具合にbe動詞に入れ替えることが可能です。
英字新聞や英会話テキストを読んだり、英語ニュースを聞いたりすると、すぐにgetに遭遇します。このコラムを読んだみなさんは、そんな時にはいつも以上にgetに注目してみてください。このgetは1番目の意味「目的語が主語にくっつく」だったか、2番目の意味「~するようになる」か考えてみてください。実例を目にすると理解度が高まります。速く自分のものにすることができます。