アジアでは少子高齢化が進んでいます。

中国は一人っ子政策の緩和に動き始めましたが、
それでもその流れは止められないほどの構造的な変化が急速に進んでいます。

今回は、この分野に詳しい日本総合研究所調査部、
大泉上席主任研究員のインタビューからまとめてみました。

21世紀中は地球規模で人口が増えていきますが、
アジアに限定すると、2030年から40年の間に人口が減少していきます。

世界の少子高齢化を先取りしてアジアが老いていくということです。

特に中国とタイは中所得国でありながら高齢化が進み、
豊かになる前に人口減少期に入ってしまいます。

中国では昨年、一人っ子政策を一部緩和する方針が出されました。
一人っ子同士の両親については第2子を産むことが全国的に認められたのです。

しかし、それでは少子化の流れを止めることはできないでしょう。
出生率が増えないのは、中国を含むアジア全体で少子化が進むような
メカニズムが機能しているためです。

アジアでは学歴社会が浸透して、子供の養育費がかなり高くなっています。

それに加え、若い人たちの結婚観、あるいは家族に対する価値観が急速に変わり、
未婚、晩婚が増えています。

そして、女性の多くが大学へ行き、自立できるようになりました。
これはいいことです。

しかし、その結果、結婚が遅れていく可能性は高いです。

日本もそうですが、これが今、アジア全体で起こっている現象です。

中国の場合、2013年の合計特殊出生率が1.6ですが、
あるサンプル調査では、1.2という数字もでています。

一人っ子政策が緩和されても、出生率が2に上がるというようなことは
考えにくく、多分不可能でしょう。

豊かになる前に老いるという意味で「未富先老」と言いますが、
中国でそういう言葉が言われ始めたこと自体、
政府自身がそのことについてかなり敏感になっていることを示しています。

では、中国ではどのように高齢化が進むのでしょうか。

重要なのは、農村で高齢化が進むということです。

毛沢東氏が進めた「大躍進」の後に生まれた人口爆発期の世代が、
農村から都市へ出られずに残ってしまっています。
一方、その下の世代の若い人たちはどんどん都市へ出ています。
日本にも「団塊の世代」と呼ばれるベビーブームの世代がありますが、
中国と構図は違います。

日本では団塊の世代が農村から都市へと出て行ったのです。
東京や大阪、福岡に出てサラリーマンになりました。
中国の場合は逆に、その世代が農村にとどまってしまったのです。

中国で人口が最も多い年齢層は40代から50代です。

この人たちは今さら都会に出ても、なかなか仕事を見つけることはできません。
また、加齢とともに新しい技術を習得するのは難しくなるので、
こうした人たちに、生活を営めるような基盤をどのように提供するか、
どんな仕事を与えればいいのかという問題が浮上しています。

先進国でさえ高齢化に対する有効な手だてはなかなか見つけにくいのです。

中所得国なら、さらに難しいはずです。
これは、中国だけが抱える問題ではなくて、
新興国全体、そして、それらに続く将来の途上国が抱える問題なのです。

この解決策を見通せないままでは、世界の将来を楽観的に語ることはできません。

中国の場合、少子高齢化の問題が深刻になるのは
2020年代の半ばだと思います。
つまり、人口爆発世代が60歳に差し掛かったあたりが
ひとつのターニングポイントになるでしょう。

低所得の高齢者が今後、どこに住むかという問題もあります。
その人たちを農村に住まわせ続けるのか、それとも都市へ移住させるのか。
これによって対策は大きく変わってきます。

都市へ移住させたほうが高齢者のケアはしやすいかもしれません。
一方で、都市の中に数多くの高齢者を抱えるとなると、
都市内での格差が今以上に広がり、
社会不安などの要因になる可能性もあります。

これらの事を考えると、中国の経済成長率はこれから鈍化せざるを得ないでしょう。
2020年には成長率が年5%になっているかもしれません。

では、子供を増やす政策を打ち出せば良いのでしょうか。

それにも限界があります。
子供というのは生まれてから働けるようになるまで、
20年ぐらいのタイムラグがあります。
中国でいま子供が増えてしまうと、しばらくの間は高齢者の介護と
子供の養育費というダブルの負担が若い人たちにのしかかってしまいます。

子供が増えれば社会が活性化するからいいじゃないかという
議論はあるでしょうが、そんなに簡単な話ではありません。

では最後に、日本企業としての関わり方はどうでしょうか。

特に北京、上海、広州というような大都市では、
わりと高所得の高齢者が増えるので、
介護ビジネス、介護用品、シニアをターゲットとした製品、生命保険や医薬品の
市場は拡大していくでしょう。

ただ、それが中国全土でそうかというと、違います。
農村では依然として、日本製品は売れないでしょうし、
介護ビジネスの需要はないでしょう。

地域によってビジネスのやり方を大きく変える必要がありそうですね。

日本は今、まさに少子高齢化の問題に直面していますが、
世界のお手本になるような政策が打ち出せたら最高に素晴らしいのですけどね・・・。