寒い冬の、代表的な食べ物に「牡蠣(カキ)」があります。
しかし、牡蠣はあたると怖いですね。

私は、2回あたったので、牡蠣は好んでは食べません。

ですが、あたらなくておいしい牡蠣があったらどうでしょうか?
そして、1年中安定的に食べられるとしたらどうでしょうか?

各分野で、食物を自給自足できたらという研究が進んでいますが、
今日は、陸でカキや魚を養殖するという話題をお届けします。

沖縄本島から約100km西方にある沖縄の久米島。
エメラルドグリーンの海に面する沿岸部に立てられたプレハブ小屋で、
世界初となるカキの完全陸上養殖プロジェクトが進められています。

目指すのは、生で食べても「食あたりしない」カキの大量生産です。

そもそも、カキがなぜ、食あたりを引き起こすのかというと、
原因は養殖で使う海水の汚染にあります。

そのため、陸の近くで養殖しているカキは、絶対加熱しなければなりません。
生食可能なカキは、陸上から遠く離れたところで養殖しているものとされています。

カキは1時間で20リットルもの海水を吸い、
吐き出す時に水中の栄養分を体内に取り込むという仕組みです。
これを繰り返す過程で、海水に含まれるウイルスがカキの内臓などに蓄積していきます。
こうして育ったカキを十分に加熱せずに食べると、食あたりになることがあります。

ならば、汚染と隔絶した「陸上」でカキを育てればいい。

そう考えたのは、全国で33店舗のオイスターバーを運営する
ゼネラル・オイスター(東京都中央区)でした。

そして目を付けたのが、久米島の「海洋深層水」でした。
 

海洋深層水には、ウイルスや細菌などがほとんど含まれません。
カキの産卵から直径約5mm~4cmの稚貝、
そして直径6cm以上の成貝に育てるまで、
全てのプロセスで海洋深層水を使えば、ウイルスに汚染されることはありません。

沖縄県では産業振興を目的に久米島の水深約600mの海底にパイプを設置し、
2000年から海洋深層水のくみ上げを始めており、
希望する企業に有償で提供しています。

そこで、ゼネラル・オイスターの吉田社長は、
2012年に久米島の陸上に養殖実験プラントを立ち上げ、
研究開発に乗り出しました。

課題はカキの「餌」でした。

カキを大きく育てるには、大量の植物プランクトンを
継続的に与える必要があるのですが、
日光が届かない深海では植物プランクトンが育たないのだそうです。

そこで、次に着手したのが、くみ上げた海洋深層水の中で
植物プランクトンを大量に培養する技術の開発でした。

海洋深層水には、もともと植物の成長に必要な窒素やリンといった
栄養分が多く含まれています。
そこに、光の強さや水温などを変えることにより、
植物プランクトンの光合成を促進させ、急速に培養する技術を確立したのです。

ゼネラル・オイスターの子会社で養殖プラントを運営している
ジーオー・ファーム(沖縄県久米島町)では、
海洋深層水1ミリリットル当たりの植物プランクトンの数を、
1週間で200万匹程度に増やせるようになったそうです。

喜んでばかりはいられません。
植物プランクトンの量をただ増やせばいいというわけではなく、
未消化の餌は水の汚染につながるため、次の取組みが必要になってきます。

カキは成長段階によって好むプランクトンの種類が変わるため、
カキの排せつ物を詳細に分析し、最適な餌の量と組み合わせを突き止めたそうです。
「カキの成長を促進する餌の大量培養技術」を見つけたことで、
他社は簡単にはまねできないと言います。

カキは通常、出荷までに2年を要するのですが、
これを1年以内に短縮して、生産コストも下げていき、
「2020年に年数百万個を出荷できる養殖設備にしたい」というのが、
これからの目標だそうです。

現在、カキ以外でも多くの挑戦が行われています。
次は、マダイやマハタの養殖に取り組んでいる、
工業用バルブ大手のキッツの紹介です。

海から100km以上離れた長野県茅野市にある
バルブ工場の敷地内に、昨年、独自開発した陸上養殖システムを設置しました。

通常、海上養殖では「いけす」を使っていますが、
赤潮や台風などの自然災害、
水質汚染によって魚介類が被害に遭う恐れがあります。

陸上養殖ではこうしたリスクを回避し安定生産できるうえ、
水温や日照時間の調整などで育成期間の短縮も可能になります。

つまり、自然にゆだねるのではなく、技術革新によって工夫できる余地が、
大きく残されているということです。

活魚の場合、価格の大部分を占めるのが陸上における輸送費です。
売値が浜値の5倍に上るケースも少なくありません。
大都市近郊で陸上養殖を手掛ければ、海上養殖よりも安く、
消費者に魚を届けられます。

新たな発想としては、例えば、
飲食店が入るビルの地下でも構わないし、
地方空港の近くだったら海外にも輸出できます。

いままでの水産業の概念が大きく変わりますよね。

キッツが、陸上養殖に乗り出した狙いは、自社の技術を
新たな事業に生かすことでした。

キッツは、すばらしい水浄化技術を持っています。

きっかけは4年前、陸上養殖業者が、魚の排せつ物に含まれる
アンモニアの処理に悩んでいると聞いたことでした。

水槽内にアンモニアが増えると、病原菌の発生リスクが高まります。
一方、バクテリアを使った従来型の生物処理では、
バクテリアだけでなく、有害な他の細菌も増殖する恐れがあるため、
キッツが培ってきた水浄化技術を応用できないかと考えたのです。

有毒物質を排出せずに化学的にアンモニアを分解し、
同時に水槽内を脱臭・殺菌する装置を開発し、特許を取得しました。

さらに、魚が空腹になるタイミングで自動的に給餌する装置や、
水中の酸素量などを管理する仕組みなども考案し、
成魚まで陸上で一貫して養殖できるシステムを作り上げたのです。

最大の特徴はコンパクトさです。
陸上養殖システムはビルの一室にも設置できる大きさです。

キッツは、実際に魚を育てながら養殖の知見を蓄積しており、
今後は水槽の大きさや水浄化装置の数など、
魚種ごとに特化したシステムを開発する計画です。

陸上養殖は別の観点からも脚光を浴びています。
遺伝子情報を自由に書き換えられる「ゲノム編集」技術です。

この研究により、肉付きの良い魚を生み出したり、
アレルギー反応が出にくいエビやカニを、
生み出すことも不可能ではないそうです。

陸上養殖を契機にゲノム編集が普及すれば、
水産業の生産性は飛躍的に高まる可能性があります。
ゲノム編集の話はまた機会があればすることにしますが、

人類の祖先が陸に上がってから約3億6000万年。
魚介類が“上陸”する日がやってきたということでしょうか。

それにしても、日本の企業はすごいですね。