「アフリカってどんなイメージ?」と尋ねたら、
 
「干ばつで食べるものがなくて飢餓にあえぐ子どもたち」
「紛争」
「広大な草原と動物」

ほとんどが、このような答えです。

かく言う私もその1人でした。

広大なサバンナで悠然と生きる野生動物。
そして、出口のない貧困にあえぐ人たち。
干ばつで農作物は育たず、食うに困る生活。
子供たちは教育も受けられず、HIVが蔓延している。
日本や欧米諸国による国際援助の対象であり、企業にとっては社会貢献の場。

実際にメディアでもこのようなことが報じられていますよね。

それと同時に経済成長率がASEAN(東南アジア諸国連合)並に高いということを
理解しても、メインの市場はBOP(ベースオブピラミッド)だろうと考えていました。

しかし現実は、

ケニアの首都、ナイロビ。
高層ビル群の合間を、スーツを来たビジネスマンが行き来しています。
ケニアの企業には女性従業員がとても多い。
街中には、ミニスカートにピンヒール、ジャケットという出で立ちの
キャリアウーマンが闊歩している。
当然ながら、ほとんど全員が黒人です。

スターバックスコーヒーのケニア版とも言える「JAVA HOUSE」は
どこの店舗もお客が溢れています。

価格帯はスターバックスと似たようなもので、コーヒー1杯が日本円で数百円します。
ナイロビ市内のカフェでは、ノートパソコンを開く若者たちの姿も多いです、

いまケニアでは中間層が爆発的に増加しています。

中間層というと、月収が日本円で3万~12万円ほどの人たちのことです。
もちろん、1カ月数千円で過ごす人たちも相当数存在します。

それでも、数年前ならJAVA HOUSEでコーヒーを買うのは
外国人が多かったのですが、最近はケニア人ばかりとか。

デロイトトーマツコンサルティング・アフリカビジネス開発リーダーの
ジェームズ・クリア氏は、「日本企業はアフリカというと、
すぐにCSR(企業の社会的責任)だという。
そうではなくて、アフリカで急増する中間層に向けて
普通のビジネスをすべきだ」と主張しています。


実際のところ、現地で目の当たりにした企業のビジネスモデルは、
ASEANなどの新興国でのビジネスとなんら変わりません。
先進国と同じモデルを再現し、成功している企業すらあるのです。


アフリカで事業を展開する世界企業の本気度は、生半可なものではありません。

例えばIBM。

同社は5月8日、「IBMイノベーション・センター」と呼ぶ
マーケティング拠点をナイロビに設立しました。
国内外の優秀な人材を約100人雇用し、ケニア政府や銀行、
電気通信事業者をターゲットにマーケティング攻勢をかけ始めたのです。

既にケニア政府には、6チームのコンサルタントを郵便や保険などの
公共サービスの改善などをテーマに、無償で派遣しています。
世界中の自治体に入り込んだ経験のある百戦錬磨のコンサルタントたちが、
ケニア政府の悩みを聞き込み、今後の方向性を示すのです。

この過程でIBMはケニア政府の悩みを理解するからこそ、
痒いところに手が届くシステムを提案することができるのでしょう。
コンサルタントの無償派遣という先行投資が、
最終的には政府システムの受注という果実をIBMにもたらす構図なのです。


IBMイーストアフリカのゼネラルマネージャーのトニー・ムワイ氏は、
「アフリカでやっているのは、まさに世界中でIBMがやっているのと
同じビジネスモデルです。それだけアフリカが成長しているということだ」、と。


IBMのほか、米グーグルやコカ・コーラ、韓国サムスン電子などの
世界企業がアフリカに進出している一方で、
日本企業は、まだまだ少ないのが現実です。

しかし、IBMなどの世界企業と同じ目線でアフリカを捉え、
一気に経営資源を投入している企業もあります。
その代表格とも言えるのが豊田通商。

豊通は1962年、アフリカ向けにトヨタ車の輸出を開始。
その後、ケニアなど8カ国で新車販売やアフターサービス、
中古車販売などを展開してきました。
自動車販売のビジネスモデルは、先進国と全く同じといっても良いものです。

いまや同社は成長分野の筆頭にアフリカを上げています。
昨年12月には、約2300億円を投じて、アフリカで大規模な事業をしている商社、
フランスのCFAOを買収しました。
ビジネスを手がけるエリアは倍増し、アフリカ54カ国中53カ国へと
広がったのです。

豊通の本気度を感じるのは、CFAO買収だけではありません。
昨年8月にはケニア政府と協定を締結し、ケニア政府が掲げる長期計画
「ビジョン2030」を進めるためのパートナーを豊通が務めるというものです。

政府が民間企業と、自国の成長戦略を共に推し進めるために
協定まで結ぶというのは、珍しいケースです。

ここに至ったキーマンは、
豊田通商イーストアフリカのシニア・アドバイザーであり、
トヨタケニア(豊通の自動車分野の現地法人)会長でもあるデニス・アウォリ氏。

このアウォリ氏。
実は元駐日ケニア大使なのです。
当然ながら、ケニア政府とは太いパイプがあり、
彼を経営トップに招き入れたことからも、豊通の本気がわかります。


協定は今後、豊通に有形無形のメリットをもたらすことになることでしょう。
規制が整備されていない新領域で、政府と共に規制を作ることになれば、
豊通のビジネスに必要な“仕様”を織り込むことも不可能ではありません。

豊通は、長年培ってきた自動車ビジネスだけでなく、
地熱発電を始めとする電力分野や石油や天然ガスのパイプライン建設などにも
食指を伸ばし始めています。

来る6月1日土曜日。
横浜市で第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が3日間の会期で開幕します。
連日、アフリカ各国の首脳の来日や新たな貿易協定締結にまつわる話題が、
報道を賑わせています。

アフリカ各国の首脳が来日するこの場で商機を掴もうと
虎視眈々と準備を進めている企業もあるようです。
多くの先行企業のトップは「ここから5年が勝負」と口々に言います。

この10年で急速に立ち上がってきたアフリカ経済の果実を得ようとするならば、
のんびりしている猶予はないようです。

興味がある人は、日経ビジネスの5月27日号の特集で
「アフリカ 灼熱の10億人市場」をご覧ください。

アフリカ7カ国で事業展開する国内外の企業のビジネス現場で見た、
今まさに大きく動き始めているビジネス大陸としてのアフリカが書かれています。

アフリカへの新たな発見をして頂くと同時に、
20年前からアフリカに出ている中国はじめ諸外国に負けない戦略を
日本企業がしっかりたてて勝ち残ってほしいものです。