日本の製造業は世界に誇れるものですが、
いま、ドイツでは「インダストリー4.0」が花盛りです。

第4次産業革命とも呼ばれている
インダストリー4.0はドイツの国際競争力を高め、
国内製造業を守るだろう、と言われています。

では、「インダストリー4.0」とはどのようなものでしょうか。

公的に発表された報告書から目新しいキーワードをひろってみると、

Internet of Things(モノのインターネット)、
Smart factories(考える工場)、
Additive manufacturing(3Dプリンター、積層造形)などなど。

「効率化や生産性向上」。という言葉もあります。

でも、
「道具が何か」という点を別にすれば、
日本の製造業にとって馴染み深い概念に似ているようにも感じます。

では、インダストリー4.0は
製造業の代表的な「トヨタ生産方式」と何が違うのでしょうか。

疑問に率直に答えてくれたのは、ドイツの自動車部品最大手、
ロバート・ボッシュの取締役会メンバーである
ヴェルナー・シュトルト氏です。

ボッシュの生産システム開発を統括しているシュトルト氏は
以前に日本に駐在していたこともあり、
トヨタ生産方式にも詳しいのです。

シュトルト氏はまず、共通点を話してくれました。

「トヨタ生産方式は(実需に基づく)『プル型』の生産システムです。
ボッシュもプル型で、とても近いやり方といえます。

見込みで生産をするのではなく、
必要なものを、必要なときに、必要な量だけ作る。

一般には、ジャスト・イン・タイム(JIT)として知られる生産の思想で、
インダストリー4.0でも、これを突き詰めていくことに変わりはないそうです。

それでは何が違うのか。

トヨタ生産方式は「大量生産」を念頭に作られたもの。

インダストリー4.0は「1個生産システム」です。

インダストリー4.0では、様々な生産ラインがつながって
膨大なデータが即座にやり取りされるようになります。

これにより、顧客の要望に応じて、
仕入先や生産工程を自在に組み替えられるようになるそうです。

Sensor(センサー)、
Software(ソフトウエア)、
Solution service(ソリューションサービス)の3Sを

上手く使いこなすことで、
今まではコスト的に成立しなかった
「テーラーメード生産」を実現できるそうです。
 
 ※テーラーメード(Tailor made)とは、受注や注文によって生産すること。
ちなみに、オーダーメイドは和製英語です。

ドイツでは、これを
「マスカスタマイゼーション(個別大量生産)」と呼んでいます。

まとまった量をベースに生産システムを考えるか、

単品生産を目指すかという違いのようです。

すでに工場に溢れているセンサーやソフトウエアであっても、
目指すモノ作りの姿が違えば、使いこなし方は変わってきます。

個別大量生産と大量生産。

これがインダストリー4.0とトヨタ生産方式の1つ目の違いと言えます。

トヨタ生産方式は、世界でもよく知られている素晴らしいコンセプトで

ジャスト・イン・タイム、かんばんといったムダを減らす仕組みを
世界中の多くの企業が学びました。

でも、インダストリー4.0は生産ということだけに
フォーカスしているわけではありません。

マスカスタマイゼーションを実現するには、
顧客との繋がり方も含めて変わらねばならないのです。

すなわち、トヨタ生産方式よりもっと広い大きな概念です。

つまり、テクノロジーを使うことで、
「工場だけでなく製造業そのものを革新する」ということのようです。

例えば、米のナイキの例です。

ナイキのウェブサイトでは、完全にカスタマイズした靴を購入できます。

※カスタマイズとは、ユーザーの好みや使い勝手に合わせて、
見た目や機能、構成といった製品の仕様を変更することです。

このサービスでは、顧客が靴を注文する仕組みも
店やカタログの中から既製品を選んでいた今までとは違っています。

このように、
インダストリー4.0はビジネスの革新まで視野に入れているのです。

つまり、インダストリー4.0が掲げる「製造業の革新」は、
単なる工場の革新、生産プロセスの革新だと捉えるものではないようです。

むしろ、新しいビジネスモデルを機能させるための必要条件として、
工場や生産プロセスの革新があると理解したほうが良いそうです。

言い方を変えると、
インダストリー4.0のトヨタ生産方式との2つ目の違いは
「工場のありかたに留まらないこと」です。

それに加え、現地での最も大きな違いは「盛り上がり」です。

ドイツでは今、数百の単位で
インダストリー4.0と銘打ったプロジェクトが進行中です。

企業が単独で取り組んでいるものもあれば、
研究所や大学と一緒になって、
新しい技術を開発しようという動きもあるそうです。

通信規格の標準化のように、多くの団体が参画しているものもあるし、
重複している研究など「交通整理」が必要な面もあるようですが、
様々なプレイヤーが1つのゴールに向かって動き出しています。

当初は自分たちに関係ないと思っていた中堅・中小企業までもが、
その熱気に感化され、インダストリー4.0の当事者として
自社のビジネスのあり方を見つめ直しはじめているそうです。

熱狂が革新を産み、概念に魂を入れる。

産官学が一体となってまい進するビジョンを、
ドイツは確かに持っているようです。

日本の製造業も見習うべき点があると感じました。

今後、ますます日本が世界に誇れる製造業として、
進化していくことを願っています。