人口約50万人、神奈川県ほどの面積の小さな国、「ルクセンブルク」を
ご存知ですか?

「名前は聞いたことはあるよ、でもどこにあるか知らない」という方が
多いのではないでしょうか。

 

ドイツ、ベルギー、フランスに囲まれた、世界唯一の大公国で、
正式名称は、日本語では「ルクセンブルク大公国」としています。

ルクセンブルクの経済は世界最高水準の豊かさです。
興味のある方は、一度この国について調べてみてはいかがでしょうか。

 

さて、近年、米アマゾン・ドット・コムや楽天など世界のインターネット大手が
相次いでこの国に欧州本社機能を開設し、注目を集めています。

第二次大戦後、鉄鋼業や金融業などで発展したこの国は
現在、ネット産業を積極的に誘致することで高い成長力を維持しています。

OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で1人当たりの名目GDP(国内総生産)は
長年にわたりトップの座を守っています。

 

日本の自治体に例えるなら、
政令指定都市の条件(人口50万人以上)にどうにか達する規模の小国が
なぜ、アマゾンのような多国籍企業をひきつけるのでしょうか。

今回は、ルクセンブルクで企業誘致を担当する、
通信メディア担当相のフランソワ・ビルチェン氏の取材記事からお伝えします。

「小国だからこそできる取組みは多い」と強調されていますが、その中身は・・・

 

ルクセンブルクがeコマース(電子商取引)をはじめとする
ネット関連企業の誘致に力を入れ始めたのは2000年。

それから10年以上にわたり、政府の主導によって高速通信網や
データセンターへ積極的に投資し、最先のIT(情報技術)インフラを構築してきました。

データセンターの利用環境は、なんと、すでに世界で5番目の水準です。

毎秒100メガビットのネット接続環境を、早期に10倍の毎秒1ギガビットに
引き上げて「欧州最高のネット接続環境を実現する」のが現在の目標だそうです。

 

ルクセンブルクにはもともと、ネット分野の有力企業が存在しなかったことも、
グローバルに活動するネット企業の誘致を推進するうえでは好都合でした。

欧州の他の国々と異なり、国内にあるネット企業への打撃をあまり気にせずに、
海外企業の誘致に専念できたためです。

今でこそ、アマゾンなどネット大手の進出によって注目を集めていますが、
ルクセンブルク政府は誘致する企業の規模にこだわっているわけではありません。

創業間もないベンチャー企業を支援するため、
ルクセンブルクでは政府が出資するベンチャーキャピタルなどが活動しており、
海外から進出してきたベンチャー企業にもリスクマネーを
供給する仕組みができあがっているのです。

 

例えば、無料通話ソフト「スカイプ」を生んだスカイプ・テクノロジーズ
(現在は米マイクロソフトの1部門)も、
ルクセンブルク政府のベンチャー支援制度を活用して、
同国で成長を遂げたネット企業の1つです。

ここ2年は、ゲーム分野のベンチャー企業の進出が相次ぐなど、
誘致企業の傾向は変化しつつありますが、ルクセンブルク政府は
進出企業の動向を見極めながら、適切な施策を打ち出していく、としているそうです。

 

小国ならではの柔軟な行政サービスも、外国からの企業進出を後押ししているようです。

ルクセンブルクでは外国企業に対し、
駐在員の就労ビザを取得しやすいルールを設けるなど、
実務面での負担軽減にもきめ細かく配慮しています。

就労ビザの取得がしやすいということは、企業にとって非常に活動しやすいことです。

ルクセンブルクでは政府関係者が全員、企業誘致の窓口となっており、
ビルチェン氏は「どの政府関係者に問い合わせてもらっても、
適切な担当者に取り次ぐことができる」と、自国のサービスに自信を見せています。

 

ルクセンブルクの政府関係者はあまり多くを語りませんが、
進出企業にとっては、他国に比べて税制も魅力的なようです。

 

例えばルクセンブルクに欧州本社機能を置くネット企業のために、
電子書籍にかかる付加価値税(日本の消費税に相当)を低く設定しており、
欧州の他の国々からは「反競争的だ」との批判を招くようにもなっています。

有力企業を誘致するため、国家同士が熾烈な制度競争を繰り広げていることも確かです。

ルクセンブルク政府はネット産業の育成に向けて
規制緩和を先導することにも余念がありません。

現在は欧州委員会での発言権を行使しながら、2014年の施行に向け、
クラウドコンピューティングの利用を促進する新たな法案作りを主導しています。

欧州の他の国々と情報セキュリティーに関する認証を事実上統合することで、
欧州最高水準と言われるITインフラの優位性を最大限に発揮する考えです。

政府が企業誘致の旗を振って自国経済の発展を促す構図は
シンガポールなどに通じるものがありますが、
ルクセンブルクでは特定の国をモデルにして企業誘致に取り組んでいるわけでは
ありません。

 

ルクセンブルクの大学生の75%は国外の大学に通っており、
ビルチェン氏は「海外で学んだ新しいアイデアを国に持ち帰るというのは、
ルクセンブルクの国民にとって、とても自然なこと」と説明されます。

政府主導というだけではなく、国民が海外に行き、
先端の知識やアイデアを身につけて、国に帰って、国を発展させています。

 

日本では昨年末の政権交代以降、大胆な金融緩和を柱とする
「アベノミクス」によって経済に少し明るさが見え始めています。

しかし、成長戦略を伴わない金融政策だけでは、景気回復の効果は
一時的なものとなりかねません。

アジアの成長力を日本経済の活力として取り込むには、
外国企業の誘致においても、大胆な規制緩和が求められます。

小国ながら外資を呼び込むことで高い経済力を維持しているのがルクセンブルク。

企業が活動しやすい環境を整え、余計な規制を取っ払って民間の成長を促す取組みは、
日本の政府や自治体にとって大きなヒントとなるはずです。