「ハラル認証」という言葉を耳にしたことはありますか。

意味として2つあります。1つはイスラム法で合法であること、
そしてもう1つは健康的、清潔、安全、高品質、高栄養価であることです。

したがって、 ハラル認証を受ける際には、
イスラム法にのっとった基準をクリアする事はもちろんですが、
工場や施設内は2つ目の項目もクリアしなければなりません。

私が初めてこの言葉を初めて耳にしたのは7~8年くらい前でしょうか。

その後、たまに聞くことはありましたが、
2年ほど前から日本でも急激に浸透し始めているようです。

豚やアルコールなど、イスラム教が禁じた成分と関係ない、
あるいは、一切含まない食品や化粧品等をいいますが、
市場拡大への期待は非常に高く、
関心を持っているのは日本だけではありません。

今回は、イスラム教徒独特の「ハラル」の市場について、
のぞいてみましょう。

まず、世界にイスラム教の人はどのくらいいるのでしょうか。

米ピュー・リサーチ・センターによると、2010年で16億人。
2030年には22億人に増えるそうです。
出生率が高いため、世界の人口に占める割合も23%から26%と推移するため、
4人に1人がイスラム教徒だということです。

イスラム教徒と言えば、中東を思い浮かべる人が多いと思いますが、
約6割はアジア・太平洋地域に居住しています。

2010年時点のデータを見ると

インドネシア  約2億人、
パキスタン   約1億8000万人、
インド     約1億8000万人、
バングラデシュ 約1億5000万人 と、

イスラム教徒が多い上位4カ国をアジアが独占しています。

つまり、人口と消費力の増大というビジネスの主戦場はアジアで、
世界の企業が成長の果実を奪い合おうとしているそんな状況なのです。

例えば、

タイのCPグループは、インドネシアでハラル対応の鶏肉製品を生産しています。

インドネシアの首都ジャカルタから西に60キロに位置する工業団地に、
その工場はあります。
2000人が3交代でチキンナゲットを生産し、社名は「チャロン・ポカパン」。

チャラワノン一族が率いるタイ最大級の財閥、CPグループです。
外資ではありますが、インドネシア最大級の鶏肉事業会社に成長しています。

インドネシアの人口は2億人を大きく超え、所得も伸びており、
人口の90%弱がイスラム教徒です。
成長市場を取り込もうとタイの資本がなだれ込んでいるという状況です。

同じ南ジャカルタの公設市場「マンパン市場」に出店する卸売業者の店先では、
生々しい現実があります。

『ミロ』の粉末を詰めた袋は一番目立つ場所につり下げてあります。
欧州食品大手ネスレの麦芽飲料への「優遇措置」があるからです。

一等地に置けば、ミロの営業担当者から謝礼がもらえるというのです。
額は月1400円相当。
味の素の製品もハラル製品ですが、こちらはコミッションが無いせいか
目立たない場所に置いてあります。

店先は、ハラル市場をめぐる仁義のない争奪戦の縮図のようです。

インドネシアが、ハラル製品の内需を象徴する国とすれば、
マレーシアは輸出を象徴しています。

人口の約6割がイスラム教徒ですが、それでも1700万人強にすぎません。
得意のハラル商品を世界に売ることで、持続的な成長を確保しています。

首都クアラルンプールから車で90分。
飲料製品を主力とする「トイブ・ファーマ・インダストリーズ」。

製品の売りは、美容効果が自慢の「コラーゲン入り飲料」。
ただし、一般的なコラーゲン用の豚は使えないため、
牛や海産物から抽出したコラーゲンを開発しました。

これをインドネシアへ、中東へ、アフリカへと輸出しています。

マレーシアは世界の企業を誘致して輸出拠点にしてもらう
「ハラル・ハブ」を目指しています。

その誘い文句の1つが
「ハラル製品は、宗教と関係なく世界で売れる」 というもの。

ハラル認証を受けるのはやさしいことではありませんが、
日本企業にとっても、ハラル市場を理解することが必要です。
内需の低迷で、海外に目を向ける企業にとってはなおさらです。

マレーシアのイオンでは、入り口の目玉となるパンの売り場に
ハラル対応を示すマークを大きく掲げ、安心感を強調しています。

そして、忘れてならないのが、昨年過去最高を更新した「インバウンド」、
つまり日本への旅行者という市場です。

所得を増やしたアジアのイスラム教徒の人々は、
円安などの追い風もあって日本に一段と押し寄せてくるでしょう。

すでに先を読み、メニューの工夫は勿論のこと、
調理をする環境の改修や、機器の取り扱いの改善などを行っている
ホテルやレストランもあります。

一番のネックとなる飲食の改善が確認できたら、
一気に旅行客を送り込んでくるという海外の旅行会社もあります。

アジアの経済成長は、イスラム圏の消費力を格段に引き上げ、
ハラル市場の世界的な位置付けを変えたようです。

このような世界的な大競争に、日本も巻き込まれつつあるように感じます。