今回はベルギーをモチーフに移民問題を考えてみませんか。

古都ブリュッセルの町並みはパリと同じく美しいです。

中心部にある大広場「グラン・プラス」は、
文豪であるヴィクトル・ユゴーが「世界で最も美しい広場」と讃えたほどで、
世界遺産にも登録されています。

観光スポットの中でも人気が高いのが、
ジュ・ド・バル広場で連日開催される「蚤の市」や、
その周囲に立ち並ぶアンティークショップです。

ところ狭しと広場に並ぶ骨董店の主は、
ほとんど中東やアフリカにルーツを持つ人たちです。

良質なものが安く手に入るということですが、
売っているものの多くは、ガラクタばかり?

それも蚤の市と割り切り、掘り出し物や自分が気に入った逸品を
見つけるのもまた楽しみでしょう。

蚤の市に店を出す中東やアフリカ系の人が、
この2年でも確実に増えているといいます。
街中にもたくさんの中東やアフリカ系の人が歩いています。

それもそのはず、ブリュッセルでは数年前に、
新生児につける名前の1位がムハンマド(モハメド)になったとか。

イスラム教の開祖として知られるムハンマド・イブン=アブドゥッラーフに
あやかろうとイスラム教徒の多くが子供の幸せを願い、その名をつけるそうです。

名づけが多様化する中で、ムハンマドが集中して多くなるため
順位が高くなったのかもしれませんが、やはりそれなりにイスラム系の移民が
増えていることを示しているのでしょう。

ベルギー全体で見ても、新生児の名前でムハンマドはトップ10に入るそうです。

島国の日本とは違い、ベルギーは、オランダ、ドイツ、フランス、ルクセンブルクに
隣接しています。

EU(欧州連合)経済圏の中で隣国へ自由に行き来できるようになり、
多くの移民が訪れています。
公用語はオランダ語とフランス語で、
すべての商品には成分などの説明文はオランダ語とフランス語の
表記が義務付けられています。

ブリュッセルの蚤の市の店主にどこから来たのかを聞けば、
アフリカのギニアやコンゴ、ジブチ。
中東ではシリア出身という人が多いようです。

彼らに共通するのは、昔フランスやオランダの統治下にあったこと。
公用語がフランス語やオランダ語である国であったため、
言語の障壁を越えられるから大挙してやってくるのだといいます。

イスラム系移民が存在感を見せているのはベルギーだけではありません。

英国統計局の発表によると、
2009年のイングランドとウェールズの両地方における
新生児(男児)の名前で、一番人気があったのは「オリバー」だったのですが、
“隠れ1位”としてムハンマドの名前を挙げています。

日本でもムハンマドやモハメドと発音による表記が異なるように、
細かなスペルの違いをまとめると、トップのオリバーを上回ったそうです。

欧州では国策として移民を積極的に受け入れてきた国が少なくありません。
少子高齢化が進み、東欧やアフリカ、中近東からアジアまで、
新たな労働力として受け入れてきました。

だが、イスラム教とキリスト教の宗教対立による暴動が発生したり、
治安が悪化したりするなどの問題も起きています。

しかし、そうはいうものの、現地で移民の是非を問うと
正直、移民がいなければ成り立って行かないというのも現実のようです。

2000年代に入って人件費が高騰し、経営が厳しくなった企業では
従業員をアフリカ系移民に変えたら、賃金はそれまで雇っていた従業員の6割程度。
現在は移民といえども賃金は上がってきてはいますが、
もはや移民なしでの経営は考えられないそうです。

一方、急激な高齢化社会に突入しつつある日本。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、
2030年の人口は2010年と比較して全国で1195万人減少します。
一方で、65歳以上の人口は726万人増えます。

現在、ただでさえ介護施設の入所は難しく、
介護士が不足している状況にもかかわらず、
わずか十数年後には今よりも多い高齢者を、少ない若者で支えなければなりません。

日本でも移民を受け入れなければならないとの声は以前からあがってはいるものの、
言葉の壁がネックとなってなかなか実現していません。

実際、フィリピンやインドネシアから看護師を呼び込もうと試みましたが、
過去5年で派遣された741人の看護師のうち、
実際に日本の試験をパスできたのは96人だけです。

合格するには日本語の試験に通らなければならず、
その大半が不合格で帰国を余儀なくされているという現実です。

日本で働きたいと来てくれたまじめな人たちを、日本語という壁で返してしまう、
また、研修生で受け入れた人たちをもう一度日本に再入国させないという
ビザの問題など、多くの身勝手な政策を日本は掲げています。

日本は賃金が高い――。新興国や途上国の人から、今はそう思われています。
でも、高齢化と労働力人口の減少が訪れる日本と、
成長著しく人件費が高騰する国とでは年々その差は縮まっていくでしょう。

この政策について語り始めると長くなるので、今回はここで止めておきます。

移民受け入れの議論は国民感情もあり、非常にデリケートな問題です。

慎重にならざるを得ない部分はもちろんありますが、
刻々と高齢化の波は押し寄せています。

世界で多くの国で話されている言語ならば受け入れの障壁は低いですが、
その点日本語を話せる人材は海外に少なく、習得にも時間がかかってしまいます。

日本語の習得を条件に掲げていては、これからは人材の確保は難しいでしょう。

逆に、私たちが日本語以外の言葉を習得しなければ
面倒を見てもらえない時代が来るかもしれませんね。