さて、今号は、「雇用」について、日本とアメリカとの違いを知る中で、
ご一緒に考えてみる機会にしたいなと思います

アメリカでは、会社が定年制を設けることは禁止されています。

定年制とは、平たく言えば「従業員の経験や能力にかかわらず、
ある一定の年齢に達したときに退職させる制度」のことで、

これは、アメリカでは年齢に基づく差別とみなされるからです。

現在の日本には、65歳以上の人が約3200万人いて、
そのうち就業者は700万人だそうです。

700万人もの高齢者が就業者だというデータを、
・・さんは、どう感じますか。

がんばっておられる高齢者が多いと思われますか?
それとも、2500万人もの高齢者が
働かないで生活しているということに驚かれますか?

働いていない人たちの中には、
働きたいと思っている高齢者もたくさんいらっしゃると思います。

確かに、十分稼いでいれば、40代や50代でリタイアしたい人もいるでしょうが、
それは、あくまで自らの能動的な選択であり、

自分の意思でリタイアするのと、ある年齢に達したときに、
一律に会社から事実上の解雇を言い渡されるのとではやはり違うでしょう。

ちなみにアメリカで禁止されているのは、
年齢にもとづく解雇だけではありません。

採用、昇進、昇給等も年齢によって決めてはいけないのです。

例えば、日本で抵抗なく行われている
「60歳に到達した従業員の給料を一律に減額して
嘱託社員として再雇用する」といった制度は違法なのです。

採用においても同様で、
そもそも採用時に、応募者に年齢を聞いてはいけない。

アメリカでは、日本のように応募者に履歴書の提出を義務付けたら、
その会社は一発でアウトだそうです。

もちろんアメリカでも高齢化は進んでいて、元気な高齢者は増えています。
そんな高齢者の一番の関心は、いつリタイアするかだそうですが、
リタイアする時期は自分で決めているのです。

一般の会社だけではなく、公務員にも原則的に定年制はなく、
州政府機関において80歳手前で働いている人などざらにいるようです。
(例外的に、例えば軍のパイロットなどの
特殊な職においては年齢制限を設けているそうですが)

その一方で、会社都合の解雇は自由自在なんです。

アメリカにおいては、「雇用関係は自由意思にもとづく」というのが原則。

会社からも従業員からも、いつでも、
差別的な理由でなければどんな理由でも、
あるいは、理由がなくても、雇用関係を終了させることができるのです。

年齢などの差別的理由にもとづく解雇はきびしく禁止していますが、
会社の解雇権は制限されておらず、
働かない人や会社が必要としない人の解雇を容易にしているのです。

この解雇自由の原則を支持するかについては、
アメリカ人の声はおおむね、この制度をサポートするものが多いようです。

例えば、
「やる気のない従業員、会社に貢献しない従業員を
雇用し続ける必要はない」

「従業員のやる気、従業員の貢献度は年齢と関係ない」

「年齢に関係なく、やる気のある従業員、
会社に貢献する従業員で会社が構成されるべき」

「希望する限りにおいて、能力があれば、
何歳になろうと働き続けることができるべき」

「65才以上でも働くことができる人が働かないのは社会の損失」

では、日本においてはどうでしょう。

日本では、定年制が許されていますが、
世界一の高齢化社会となって久しい日本において、
定年制が放置されていてよいのでしょうか。

元気な高齢者が増えてきていることもあって、
遅まきながら、最近は色々な動きが出てきています。

例えば、2013年に施行された「改正高年齢者雇用安定法」によって、
政府は60歳だった定年年齢を65歳に延長しています。

しかし、これは「高齢者が元気になってきたから定年の年齢も
上げておこう」といった場当たり的な対応のような気がします。

一定の年齢に達したことを理由に解雇できることには変わりはありません。

さらにいうと、「改正高年齢者雇用安定法」によって、
60歳になった従業員を一旦やめさせて雇用契約を結び直すことを
認めているのもすっきりしません。

再雇用の際には嘱託社員や契約社員としての採用で、
給与を6割や半分近くに下げることも許されています。

年齢ゆえに給料が減ったり職責が下がったりするのであれば、
年齢差別が存在していることに変わりはありません。

アメリカであれば違法な制度です。

では、そもそも定年制の目的とはなんでしょうか。

日本企業は解雇権が厳しく制限されています。
終身雇用制の名残がある企業も多く、
従業員は定年まで安心して働くことができます。

そんな日本企業に定年制がなくなれば、人材の停滞を招き、
上がつかえて若者の雇用機会がますます減ります。

従業員は高齢者ばかりとなり、会社としての競争力も失ってしまう。
だから、バランスを取るべく
「定年に達したら一斉に辞めてもらいますよ」と
いうことなのでしょうか。

日本企業においては、傾向として、
従業員は能力や実力に関係なく会社にいることができます。
しかし、同時に能力や実力に関係なく一定の年齢に達すると
会社を去らないといけない。

定年まで安心して働けると言えば聞こえはいいのですが、
どんなにやる気があり、能力や実力があっても
定年になれば解雇されてしまう。

「自分はもっと働けるのに」
「もっと役に立てるのに」という思いを抱きつつ、
静かに会社を去っていくのです。

これは会社にとってもマイナスではないでしょうか。

さらに、従業員は自らの定年が近づくと、
「自分は数年後にお払い箱だ」と否が応でも思い知らされ、
前向きに働けなくなるという損失も無視できないといいます。

大企業では、定年の年齢に到達する何年も前から、
定年を見据えた人事異動が行われます。

通称「肩叩き研修」なるものも実施されているといいます。

つまり定年の何年も前から、近い将来に自分の年齢ゆえに
会社から不要の烙印を押されることを認識させられるのです。

もし、会社から解雇される理由が年齢でなく、
自分の能力や実績だったらどうでしょうか。

それもつらいことかもしれませんが、
年齢ゆえに解雇されるよりましではないかと思ったりするのです。
別の会社では能力を発揮できるかもしれないし、
実績を上げることができるかもしれない。

でも、年齢ゆえの解雇は残酷です。

もちろん、日本において、今のままで定年制を禁止すべきではありません。
終身雇用が約束されていて、かつ定年制が禁止されれば、
会社は高齢者だらけとなるからです。

若者が仕事を見つけるのがますます難しくなるのは明らかです。

したがって定年制を禁止するのであれば、
同時にやる気のない従業員、働かない従業員を解雇しやすくすることも必要です。
会社に貢献していなければ解雇もされるという
雇用慣行をもたらさないとバランスが取れません。

いや、そうなれば、バランスが取れるどころか、
日本の会社やビジネス社会にエネルギーをもたらすかもしれません。

やる気があって、実際に能力の高い高齢の従業員には今までより有利になり、
一方で、若くてもやる気がなく、能力が低い従業員は仕事を失う可能性がある。
出世や昇給はもちろん、雇用そのものも会社にいるだけでは保証されない。

つまり、昇進や昇給だけでなく、
雇用そのものが年齢に関係なく決まる実力主義ということです。

今の日本は、少子高齢化が急速に進んでいます。

やる気と能力のある高齢者を雇い続けないと、
会社、ひいては日本が回らなくなります。

働き続けることができる高齢者の多くが、
定年制により、一律に働くのをやめ、
そして年金生活者となる流れを断ち切らないといけない。

こういった雇用社会においては、
会社側のフェアな解雇判断が必要となります。

そのあたりは、法とそれを遵守させる司法制度が担保しなければなりません。

日本においてフェアな雇用慣行が実現するのかどうか。

また、そもそも解雇しやすい、しかし年齢差別を禁ずる雇用社会が
日本に合うのかどうか、さまざまな議論があるでしょう

世の中が大きく変わろうとしている中で、

高齢者も若者も働くことのできる環境はどのようにすれば
実現できるでしょうか。