リオ五輪も大きな盛り上がりの中閉幕し、
間もなくパラリンピックが始まります。
ハンディキャップをもった選手たちの超人的な能力には
偉大なものを感じます。

健常者の自分がもたもたとした生き方をしたら恥ずかしいと思いながらも、
精一杯応援したいので、私はしばらくは夜更かしが続きそうです。

でも、
リオ五輪はたしかに面白かったですね。

日本にとっては獲得メダル数が史上最多を記録し、
次の東京五輪に大きく弾みをつけるかっこうとなりました。

東京五輪については、エンブレムのトラブルや
新国立競技場のデザイン変更など、
いろいろありがたくない話題を提供してしまいましたが、
日本選手が地球の裏側のリオ5輪でこんなに活躍していると
4年後がとても楽しみになりますね。

リオ五輪では、驚くような出来事もたくさんありました。

プールが緑になったり、
マラソンコースに反政府抗議者が侵入してビラをまいたり、
ゴルフコースにワニやカピバラが侵入したり、
ナイジェリアの国歌を流すときにニジェールの国歌が流されたり、等々。

唖然とするようなアクシデントもありましたが、
それでも世界のトップアスリートたちがしのぎを削るのを見るのは
ワクワクしたし、なにより日本人選手が活躍したのが本当にうれしかったです。

ところで、リオ五輪で中国選手が思いのほか活躍しなかった、と
・・さんは感じませんでしたか?

そう感じたのは私だけではないようですよ。

中国国内外のメディアで、なぜ中国選手が急に金メダルを取れなくなったか、
というテーマの記事が散見されています。

北京五輪では金51個、メダル総数100個を記録した中国は
リオ五輪では金26個、メダル総数70個に激減し、
メダルの総数でいえば米、英に次ぐ3位でした。

日本の金12個、メダル総数41個(リオ五輪)に比べると
十分多いのですが、中国人たちにしてみれば、金の数が全盛期の半分になった、
英国にも負けた、どういうわけだ!?ということなのでしょう。

リオ五輪の開催前は、中国は金メダル最高36個が期待できる、
との予想もでていたようですが、それより10個も少ない。

特に体操。
ロンドン五輪では、体操はメダル12個中5個が金。
北京五輪ではメダル18個のうち11個が金でした。
それがリオでは銅が2個にとどまったのです。

多くの中国人は、選手の実力のせいではなく、
選手のメンタルが原因だと思っているようです。
つまりかつてほどハングリー精神、ガッツがなかった、ということ。

では、なぜ選手たちにガッツがなくなったのか。

中国メディアでは、
中国が金メダル至上主義でなくなった、とか
スポーツ大国で金メダルが減ること自体は悪いことではない、
といった論評があるようです。

例えば、ニューヨークタイムズの北京駐在記者のクリス・バークリーが
書いた記事の中身を簡単に紹介すると、次のような内容です。

中国はかつて金メダルの数でもって国力の増強具合の指標としてきた国だった。
しかし、中国は国際スポーツイベントにおいて、メダルそのものに
選手と納税者(国民)たちが、そこまで多大な犠牲を払うほどの価値を
確信しなくなった。

さらには、中国政府の体育管理部門のやり方も、
そうした時代の変化に対応できておらず、多くの人が批判的である。

五輪金メダリストのためにわが子を厳しい訓練の場に送り込む親も減っている。

今までは、地方の小都市・農村出身でも、スポーツ選手になれば
よい暮らしが送れると信じている親たちが、我が子を体育学校に
送り込んでいました。

しかし、子供の未来に五輪金メダリストの夢をかけるような
そうした親たちは減っており、同時に、余暇、趣味として
スポーツを教えるスポーツクラブや学校のクラブが人気になってきている、
と報じています。

そうすると、中国経済の改革と同じく、スポーツ行政も
改革論議が起こるべきなのですが、
中国の国家スポーツ育成システムを改革するということは、
多数の党員・公務員が飯のタネを失うことになるので
習近平主席率いる政府も思い切った改革もできないということのようです。

こうした状況について、
政治改革、腐敗退治、体育制度改革に注意を向けねば
今回五輪のような成績の低迷は続いていくだろう、と指摘しています。

中国の大衆は、国家の代理戦争という気持ちで
五輪を見ていた時代がありましたが、
徐々に競技そのものを楽しむように変わっていっています。

とはいうものの、中国の五輪への執着は依然強く、
中国の民衆は日本に対しても、まだ深い敵意を抱いているところがあるので、
中国政府は東京五輪で最多の金メダルをとることを選手たちに要求しているようです。

目標を東京五輪に置いているので、リオ五輪には若手選手をより多く参加させたため、
その分、成績が悪くなったという意見もあります。

実際、中国では、勝てば国家的ヒーローですが、結果を出さなければ
大バッシングを受けるプレッシャーにさらされ続けた結果、
心と体にかなり問題のある選手も、しばしばニュースになっています。

引退後、お金に困ってネット上で金メダルを売る選手や
窃盗などで逮捕される選手、ドーピングや過剰な練習によって
身体に障害を負った末、使い捨てにされた選手、
またメダルをとったとたん一気にセレブ扱いになり、
莫大な金が集まってくることで競技への情熱を維持できない選手などの問題は、
五輪の季節のたびに、中国でも社会問題として報じられています。

陸上や体操、レスリングといった競技はとくに、
そういった中国スポーツ育成システムの宿命を抱えていました。

実は、もう一点、重要なことがあります。
切実に中国経済が悪化しており、金メダリストに対して、
かつてのようなバブリーな賞金や企業スポンサーによる
副賞がなくなったということです。

たとえば、リオ五輪の金メダリストに対する国家体育総局からの報奨金は、
ロンドン五輪50万元のころの半分以下で、19万元に激減しました。
さすがに、これは選手たちのモチベーションが一気に下がるのも
仕方がないのかもしれません。
さらにいえば、地方政府とスポンサー企業からの副賞もかなり減ったようです。

例えば、騰訊ニュースによると、例えばリオ五輪の自転車トラック競技で、
中国史上最初の自転車競技の金メダルをとった宮金傑の故郷の
吉林省東豊県の書記が、彼女の父親に50万元の奨励金を贈ったことが
ニュースになりました。

これと比べて、北京五輪のときには、
卓球選手の王皓が卓球男子団体の金メダルを吉林省初の五輪金メダルとして
持ち帰ったとき、彼がもらった奨励金は、吉林省政府から120万元、
長春市政府から100万元、さらにスポンサー企業から68万元と豪華マンション一戸。
総額にすると、軽く6倍になります。

リオ五輪で男子水泳自由形200M、400Mで金、銀をとった孫楊は
ロンドン五輪のときに金2個銀1個銅1個というメダルを持ち帰ったのですが、
このとき彼が得た賞金、奨励金、副賞の総額はざっと4億元相当だったとか。

ざっくりといえば、北京五輪のときは省級政府からの奨励金は100万元から150万元、
市級政府で80万元から100万元が相場でした。
ロンドン五輪ではそれが、省級政府60~80万元、市級政府40~50万元に激減し、
リオ五輪では、さらに激減したようですが、その激減ぶりは
公的には明らかにされていません。

その背景には習近平政権の反腐敗キャンペーンが影響していると言われています。
詳細な状況は割愛するとして、習近平政権になってから、
地方財政がかなりひっ迫したうえに、いびつな体育行政と
それに伴う腐敗の問題が、反汚職キャンペーンのターゲットとして
追及されたことは確かなようです。

中国の選手にとって、得られる賞金・奨励金・スポンサー企業の副賞、
その後の安泰な生活への約束が、やはりメダルへの執着を支える
大きな要素ではなかったのか。

中国経済のバブル崩壊とともに、五輪の金メダルバブルがはじけたというのが、
リオ五輪の中国不振の大きな背景ではないだろうか。

このような内容のことが報じられています。

中国選手やスポーツ観戦客の競技観、五輪観の成熟、中国経済の失速、
どちらにしても、国家、共産党政府の与える政治的任務を果たそうと
厳しい練習に耐え歯を食いしばって金メダルに執着する選手は
今後ますます減っていくように思えるのですが、
東京五輪で、どのようになっているか静観したいと思います。

中国のことはさておき、4年後の東京五輪では、日本の選手たちが
正々堂々と戦い、素晴らしい活躍をしながら世界の交流の場となるよう、
心から願います。