日本で出版されている書籍をタイ語で紹介する「e-Bookシリーズ」の
ビジネスがスタートしています。

仕掛けたのは、書籍キュレーションサービスを提供する
株式会社情報工場(本社東京)と、
タイで生まれたe-Bookストアを運営するOokbee(ウークビー)です。

「キュレーション」という言葉が耳慣れない方もおられるので、
少し補足説明をしますね。

まず、キュレーションを行う人はキュレーターと呼ばれます。
キュレーターの語源は、博物館や図書館などの管理者や館長から来ています。
つまり、キュレーターが館内の展示物を整理して見やすくするのと同様に、
インターネット上のあらゆる情報を、
キュレーター独自の価値判断で整理するのがキュレーションです。

自動化による画一的な情報収集より、手動によってまとめられた情報は、
同じ価値観を持つ人々にとって共感しやすく分かりやすいものです。

従来の検索サービスの検索結果と比べて、
「不要なものが少ない」「センスが良い」などといった理由から
人気が高まっているのです。

このような、人の手 によってある特定のテーマや切り口でまとめ、
編集・共有・公開するサービスやウェブ サイトの総称を
キュレーションサービスと呼んでいます。

今後キュレーションサービスが普及し、更に充実すれば
検索サービスの手法の主流が変わるかもしれませんよ。

話しを本題に戻すと、

そして、いま、書籍キュレーションサービスの㈱情報工場が
ウークビーのプラットフォームを使って
「Successful Business Lessons from Japan」を始めたのです。

ここでは、タイで翻訳出版されていない日本の書籍を週に約3本、
月に合計約12本のペースで紹介するというものです。

タイ人に馴染みがあり、関心も高い日本の人気ブランドをテーマにした
3冊のビジネス書を、数分程度で読める“ダイジェスト版”にして
タイ語版電子書籍となって登場しました。

第1弾の、この3冊とは、

1. トヨタ自動車の片付けメソッドに注目した
『トヨタの片づけ』

2.熱狂的なファンを持つスタジオジブリの作品創りに迫った
『ジブリの世界を創る』

3. 無印良品の人事教育をクローズアップした
『無印良品の、人の育て方』

ちなみに、無印良品は、タイに11店舗を展開し、
順調に業績を伸ばしているんです。

タイの書籍に関しての現状を、ウークビーのエグゼクティブディレクター、
松尾俊哉氏は言います。

「タイ人はあまり本を読まないと言われます。
それはある意味正しいのですが、
これまではコンテンツそのものが少なかったし、
あっても紙の本は高かった。

書店の数も決して多くありません。
しかし、環境が整えば読む人は必ず増えます。

事実、電子書籍なら安く読めますから
ウークビーの会員数は650万人を超えました。

日本のことを勉強したいというタイ人も多いので、
タイ語にすれば必ず読んでもらえると見込んで、
このサービスを開始しましたが、反響は非常に良いです。

ダイジェスト版ではなくもっと長いものを読みたいという声が多いので、
いまその計画を進めているところです」と。

ウークビーで人気を集めているのは
定額で雑誌や新聞が読み放題になる「Ookbee buffet」。

ベーシックコースは月額199バーツ(約700円)、
プレミアムコースは月額299バーツ(約1000円)。

今回ご紹介している「Successful Business Lessons from Japan」は、
情報工場が2005年から日本国内で展開している
「SERENDIP(セレンディップ)」の延長線上にあるものです。

「セレンディップ」とは、
ビジネスパーソンが関心を持ちそうだったり、
新たな気づきを得られそうだったりする本や雑誌記事をピックアップし、
それぞれ10分程度で読める約3000字程度の分量にまとめて、
週に4回メールで会員に配信する有料サービスです。

大手上場企業の経営陣や管理職を中心にすでにユーザーは6万人を超えています。

2014年からは、海外書籍のダイジェスト配信もスタートしています。
といっても、日本語に翻訳された書籍ではなく。
日本では未翻訳の書籍の中から、日本人が興味を持ちそうな書籍を見つけ出し、
日本語のダイジェスト版を作成しているというものです。

ダイジェストというと、要約やあらすじと混同されがちですが、
そうではなく、加工はできるだけ控え、原文をできるだけそのまま引用し、
本の内容を忠実に伝えることを目的としています。

映画の予告編をイメージしていただくとわかりやすいですが、
ハイライトシーンをピックアップし、巧みに一つに編集した予告編は、
本編の映画が見たくなるように誘っていますよね。

本のダイジェスト版もしかり。
「丸ごと読みたい」という気持ちを喚起し、
書店やAmazonへと読者を導く案内役です。

スタート当初は、ダイジェスト版を出されたら本が売れなくなると
出版社側に敬遠されながらも、地道に改良を重ね、
情報工場は「セレンディップ」を軌道に乗せたそうです。

今では、ダイジェストの許諾を情報工場に与えていない国内の出版社は
もはや少数派とのこと。

書店に与える効果も大きく、紀伊國屋書店と組み、
「セレンディップ」で紹介して好評を博した書籍を集めた
「厳選書籍フェア」は大好評を収めたようです。

ダイジェスト版からは様々な波及効果が生まれます。

日本の出版社の大半は自社本の翻訳には積極的ではありませんが
冒頭お話したタイで、丸ごと読みたいという声が多ければ
ダイジェスト版で好感触が得られているので、
ある程度採算が見込めるため、全文翻訳をして販売することができます。

二つ目は、
ウークビーとの提携を機に、日本の書籍やコンテンツを
いろいろな国の言語に置き換え、提供するサービスに取り組むこともできます。

ウークビーは、既に、ベトナム、マレーシア、フィリピンにオフィスがあり、
今年中にインドネシアにも進出します。
シンガポールにはパートナー企業を通して事業を展開し、
ASEANにはひと通りベースができました。

世界中のビジネスパーソンの好奇心を満たすための
コンテンツを提供する計画が着々と進んでいるようです。

つまり、日本のビジネス書が将来的にはタイ語や英語はもちろん、
ベトナム語、マレーシア語、インドネシア語、タガログ語にも
翻訳されていく可能性があるということです。

日本のおもてなしや茶道など、日本の教養に対する関心も高いので
今後は、ビジネス書だけでなく、
そうしたテーマも需要があるとにらんでいます。

さらに展開するなら、

その逆の動きもすでに始まっています。
タイをはじめ、海外で発刊された書籍を日本語に翻訳し、
日本人に紹介するという試みです。

ちなみに、情報工場が「セレンディップ」で取り上げた海外書籍のうち、
6、7割はその後、日本で翻訳出版されています。
海外で話題の事柄を知ることができるだけでなく、
日本での話題も先取りできるということです。

実は、書籍出版のハードルはかなり高いのです。
企画書を出し、編集者とやりとりをして手直しをし、
企画会議に通れば、ゴーサインが出て取材執筆にとりかかり完成を目指す
というのが一般的なフローですが、出版不況の日本では、
このゴーサインがなかなか出ません。

返本は怖いので、ある程度部数が見込める著名な筆者やテーマでなければ
首を縦に振らない、という出版社がほとんどです。

しかし、事前にダイジェストを出してみて、そこで引きが強ければ、
出版の可能性は高まります。

日本でどれぐらい売れるか、
海外で翻訳したらどれぐらいの部数が見込めそうかの手応えが
事前につかめれば、リスク恐怖症の出版社の姿勢も
多少変わるのではないでしょうか。

ウークビーでは、マンガや小説、ビジネス書、自己啓発本などの
ライターやミュージシャンが自分たちの作品を
自由にアップロードできるプラットフォームを用意しています。

アップロードが無料なら、ダウンロードも無料です。
ウークビーのプラットフォームを使えば、
誰でもコミックや小説、自己啓発本、音楽など
自分の作品をアップロードできるし、資金が無ければ
資金を募って書籍化することも可能なのです。

情報工場とウークビーはオンラインとオフラインを巧みに使い分け
相乗効果を出し、難しいとされてきたコンテンツのマネタイズに成功しています。
(マネタイズ:ネット上の無料サービスから収益をあげる方法 のこと)

情報工場のキュレーション力がウークビーのプラットフォームを得て、
消極的な日本の出版社の海外進出をどうサポートし、
どんな海外のコンテンツが日本に届けられるのか。

出版の形態はこんなところから変わっていくのかもしれませんね。