自動車はドンドン進化していきます。

巷ではあまり話題になってはいませんが、
いま、「空」が有力な選択肢として浮上しているようです。

世界では、次世代の移動手段として論争が繰り広げられています。

まず、トヨタのお話から。

2017年5月の土曜日の昼下がりのことです。
愛知県豊田市の山林にある廃校の裏に、
数台の自動車が次々と滑り込んでいきました。

荷台から工具箱を取り出し校内へ。
廊下に無造作に置かれていたのは、
解体された空飛ぶ自動車の部品でした。

トヨタの若手有志が中心となり
2012年に立ち上げた空飛ぶ自動車開発プロジェクト
「CARTIVATOR(カーティベーター)」の仲間たちです。

参加者をトヨタだけでなく、デンソーなど徐々に社外にも広げながら、
「週末に手弁当で活動」を続けてきました。

手弁当なのでとにかくお金がありません。
作業場は豊田市からほぼ無料で借りている廃校。

電源は、唯一生きている屋外のコンセントから
長い電源コードで引っ張ってこなければ使えない状況です。

これまで校庭で飛行試験を繰り返した機体は、
活動をする中で出会った人物が
自身の退職金数百万円をはたいて手作りした
「空飛ぶクルマ」の部品がベースとなっています。

プロペラは大型ラジコンのものを転用し、
テスト飛行では、地上約1.5mの場所で約1分、
浮かばせることができました。

どんどん資金がつぎ込まれるシリコンバレーのベンチャーに比べると、
なんとも過酷な状況ですが、参加者たちの表情は明るく、
その目はキラキラと輝いていました。

目標は2020年の東京オリンピックの開会式で飛ばすことです。

カーティベーターは2012年、代表の中村翼氏が
社外のビジネスコンテストに参加したのをきっかけに発足しました。

オーダーメードのEV(電気自動車)という計画で優勝し、
その後、アイデアを練り直すなかで空飛ぶクルマにたどり着いたのです。

「わくわくするモビリティーを実現したい」。

こんな思いに賛同し、
デザインや機械設計などを担当する約30人が加わりました。

トヨタグループ外からも、
ドローン(小型無人機)の開発で実績を持つ
三輪昌史徳島大准教授らが参画し、
ガンホー・オンライン・エンターテイメントの創業者、
孫泰蔵氏らも支援者として名を連ねています。

その一方で、事業としての推進体制はなかなか固まりませんでした。

開発を加速するために、ベンチャーキャピタルからの
資金調達なども模索したのですが、思い通りに進みませんでした。

2015年半ばにはトヨタ幹部に支援を直訴したものの、
その時は、具体的な動きにはつながりませんでした。

ですが、トヨタの研究開発に対する姿勢が徐々に変わり始めました。

2015年11月に技術系の新興企業に投資する
ファンドを設立することを決め、
2016年に入ると外部の専門家をトップに据えた人工知能(AI)の
研究開発子会社を米国に設立したのです。

そして、トヨタは6月10日、2018年3月期の研究開発費を
過去最高水準に迫る1兆500億円とする計画を発表しました。

さらに、2017年5月14日、
トヨタをはじめとするグループ会社15社から、
カーティベーターに対して
今後3年間で総額4250万円の支援金を出すことが決まりました。

クルマは進化を続けて利便性を高めてきましたが、
排ガスによる環境問題や新興国などの渋滞は非常に深刻です。

これらを解消にむけ、自動車各社は電気自動車(EV)や
燃料電池車など新たな動力源のクルマを開発しており、
同時に自動運転の研究も進めています。

そのようななか、
個人の移動手段として空飛ぶクルマがにわかに注目を集めるのは、
従来の発想ではなく、現在の自動車が抱える問題を
解決できると期待されているからです。

道路そのものが不要になれば、渋滞はなくなります。
垂直で離着陸できれば滑走路は不要です。

これにより、人の動き、流れが劇的に変わる可能性を秘めています。

SF映画で、宇宙という空間にビルが建ち、
その間を、車が飛び交っている映像を見たことはありますが、
それとはちょっと違うような・・・。

頭の固い私は、数台の車ならいざ知らず、
たくさんの空飛ぶ車が今の地球上で走り回る、
いや、飛び回る情景を想像してみた時、
自分の頭上に車がいる?ということが、にわかに想像できません。

こんなことを考えていたら、進歩はないんでしょうね。

なので、正直、法整備や環境整備と言っても
ハードルはまだまだ高いことでしょう。

一方、トヨタ以外では、
米グーグル共同創業者の、ラリー・ペイジ氏が出資する
米新興企業のキティホークなどが実用化計画を示しています。

欧州航空機大手エアバスは年内に試験飛行を始めると公表しました。

ライドシェア(相乗り)の米ウーバーテクノロジーズは、
4月に空飛ぶタクシーの開発計画を発表しました。

いまや、「空飛ぶ」は決して絵空事ではないところに来ています。

その一方で、
先ほども少し触れましたが、安全性の確保に加え、
免許や交通ルールなどの法整備といった課題は山積しています。

騒音や風といった課題があるし、
頭上を飛行すると不安に思うということも確かではありますが、

今後、トヨタなど大手企業が支援して開発が加速すれば、
現実としての議論が増すのは確実でしょう。

技術革新への備えは盤石なようにみえますが、
実態はやや異なるようです。

「将来のクルマは現在とは
全く異なる形になっているかもしれない」と、
トヨタ幹部は危機感をあらわにしています。

IT(情報技術)企業や新興企業など、
異質な考え方や速さを持つ新たなライバルとの競争が始まっており、
従来の枠組みを超えた突き抜けた発想も必要とみています。

つまり、クルマは、陸(2次元)から空(3次元)へと飛び立つ。
すると、製品開発に必要な技術が従来の自動車関連だけでは
足らなくなります。

航空力学や空中での機体制御など、
全く分野の異なる技術が必要になるのです。

一部には慎重な見方があったものの、
内山田竹志会長が
「技術の完成を待って資金を出すやり方では前進しない」と判断。

草の根の革新に賭けたのです。

トヨタはかつて、事業の柱を
自動織機から自動車へと大胆に変革をした経験を持っています。

それからおよそ80年。
再び技術の大転換期を迎えています。
小さな一歩ですが、新たな取り組みは
非連続な変化を乗り越えるきっかけになるかもしれませんね。

空飛ぶ車5選
http://car-moby.jp/24148#c6

次回は続編として、海外の「空飛ぶクルマ」の開発状況や、
空があれば「水」もあり、という話題をお届けする予定です。