会社を経営している以上、自社の商品やサービスに
価格を決めるという場面に誰しも遭遇します。

安くすれば利益が少ない、
高くすれば売れるかどうかわからない。

そういうジレンマの中で、価格を決めることに悩まれていると思います。
価格はその提供する価値の値段ですが、価値の感じ方は人それぞれです。
であれば、その価値を感じてくれる人は誰かを考える必要があります。

つまり、対象とする顧客は誰なのか、ということです。

日経ビジネス2月13日号特集「凄い値付け」の記事が出ていましたので、
ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、

希少な木を使った4320万円のテーブル、
30万円のウォークマン・・・。

価格だけ聞くとびっくりしますよね。

これらは、綿密に考えたうえで販売価格を決めているのですが、
これらの企業が凄いのは値付けだけでなく、
市場に受け入れられるために売り方も工夫していることです。

さらには、新しい市場価値を作り出すことにも取り組んでいるのです。
 

まずご紹介するのは、エスネクスト(神奈川県川崎市)です。

45万円のイヤホン「LABII」を200本限定で売り出したところ、
即完売となりました。

さんは、信じられますか?

イヤホンは2000円くらい出せば、必要十分な性能の商品が手に入ります。
「LABII」はそれより200倍以上も高いのですが、
想定を上回る反響だったので、現在追加生産を検討しているそうです。

一体どんな人が買うの?

そう思いますよね。

まず、どんな構造になっているかというと、
NTTデータと技術提携し、
三次元CAD技術で高い精度の駆動部を作り、
ケーブルはスーパーコンピューターのデータ伝送にも使われる
素材を採用しているそうです。

つまり、不要な振動を抑えられる形状としたことにより、
臨場感ある音楽再生ができるようになった。

と、いうことのようです。

詳しくはこちらでご確認ください。
http://final-audio-design.com/archives/4952

で、先の話にもどって、この価値を感じる人は誰かということです。

それは、音楽好きの人。
それも、半端じゃない音楽好きな人なんですって。

たとえ20万円の月収しかなくても買いたいと思ってくれる
音楽好きな人を狙ったそうです。

高額商品なので「富裕層を狙った販売戦略」を立てているのかと思いきや、
あえて富裕層は狙っていないとのこと。

音楽好きに狙いを定めれば、
巨額な広告宣伝費をかけることなく、確実に欲しい人だけに届けられます。

マーケティングに力を入れない代わりに、
一方では、顧客と対話する時間を大切にしたと言います。

同社は工場内にショールームを設置しました。
その場所は川崎の武蔵小杉駅から徒歩20分ほどかかります。

わざわざ来てくれた見込み客なので、
じっくりと好きな音を納得いくまで聞いてもらうという戦略です。

こんな不便な場所に冷やかしの方は来られない。
そう判断してスタッフは何時間でも試聴に付き合うことがあるそうです。

販路開拓も高級オーディオを扱う専門店の担当者に的を絞り、
気に入ってもらえた店とだけ取引する営業手法を採用しています。

販売員の頭のなかには、見込み客が数人浮かんでいることが多く、
彼らに丁寧に説明すれば売れると判断しています。

凄い値付けの裏には緻密なこんな販売戦略があったようですよ。

エスネクストのように対象顧客がはっきりすれば、
営業にかける人員も最小限で済みます。

人員に限りがある中小企業でも
大手と対等に張り合える戦術といえそうです。

さて、つぎにご紹介するのは、視点を変えるというお話です。

日本の漫画は世界中で人気がありますが、
国内の漫画市場は15年ほど前まで5000億円ほどあったものの、
年々縮小傾向にあるようです。

そのため、販売先を海外に移すという発想です。

それを実践するのが、アニメなどのコンテンツ管理や
配信を手がけるダブルエル(東京・品川)です。
http://doublel.co.jp/

ただ、販売を海外に移すということではなく、
販売するものを選び、
収入が減っている漫画家に新しい稼ぎ方を提案しています。

それは、海外の原作を元に、日本人の漫画家が描くというモデルです。
現地で人気がある原作を日本人の漫画家が描く!

漫画家がアイデアを考えても、ヒットする確率は不透明です。
しかも海外となると好みが異なり、
成功のハードルはさらにあがってしまいます。
その点、原作があれば大きくはずしてしまうことは少ないですね。

このモデルでダブルエルが目指すもう一つの取組みは、
漫画家の収入の安定です。

漫画家はヒット作品を生み出せば高額な報酬を得られますが、
ヒット作に恵まれないと収入がないといったように安定性に欠けていました。

先に書いたように、日本国内では年々縮小傾向にあり、
漫画家が活躍できる場が減っています。

ダブルエルによると、漫画家に支払う単価も下落する一方だそうです。
デジタル配信で作品を公開する場は増えていますが、
漫画家として生活できる人はひと握りしかいません。

しかし、日本の漫画家は売れっ子でなくても技術力が高いといいます。

週刊誌の連載のように、何週にもわたって飽きさせない
ストーリーを考える能力はほかの国の漫画家と比べて非常に長けています。

昨今、海外での日本のアニメや漫画の需要は非常に大きく、
その流れの中で、漫画家の業務を分解して強みだけ残したことで、
新しい市場を開拓しようとしています。

日本での仕事よりも海外向けの漫画を描くことで、
高い報酬を払える。

そうすると、仕事量が一定になり、収入がぶれなくなります。 

海外で人気のストーリーを日本の漫画家が描いて輸出する。
面白い発想です。

この2つのケースのように、戦う土俵を変えることで、
従来とは異なる市場に挑めます。

既存の顧客層と異なり、収益も確保しやすい
一石二鳥の環境が整う可能性があります。

とは、いうものの、土俵を変えるには大きな決断が不可欠です。
競争相手が多く収益が厳しいとはいえども、
一定の需要を捨てる勇気が持てるかどうかです。

価格設定を大きく変えれば、
対象顧客をがらりと変えられます。

リスクとメリット!

この変化対応力は、イヤホンや漫画に限らず、
多くの業界で求められている発想ではないでしょうか。