オリンピックの話題にかすんでしまっていますが、TPPは水面下で進行しています。
日本の一般家庭ではあまり馴染みはありませんが、
海外の中流家庭では普通に利用している「メード」という仕組みについて
考えてみませんか。

今後、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉がどのように決着するのか、
非常に興味のあるところですが、
TPPは、農産物や保険に限ったことではありません。
人材もその対象になっているのをご存知でしょうか。


いま、巷では女性をもっと活用しようという声が叫ばれていますが、
その大きな障害になっているのが、家事であり子育てです。

この部分が解消されれば、女性はもっと活躍できることでしょう。
女性が一層活躍するための「ウルトラC」の手段として、
外国人家事労働者の受け入れの可能性が考えられますが、
現状はどうなのでしょうか。

日本の一般家庭ではかなり難しい部分もありますが、
いわゆる「メード」が住み込みに近い形で家事や育児のサポートをすれば、
多くの女性が今よりも仕事に専念できます。

これからは介護の必要性がある家庭では側面からサポートができるかもしれません。

TPPの交渉で、こうした労働力の移動が議論され、
今は厳しく規制されていますが、外国人メードの雇用が
解禁される可能性があるということです。 


例えば、香港は現地で「アマ」と呼ぶ、フィリピンやインドネシアなどからの
メードをフル活用している地域です。

仮に日本が門戸を開放したら何が起こるのかを以下に予想してみましょう。

まず確実に起こりそうなのが、既にこうした外国人の家事労働者を受け入れている
国や地域への大きなインパクトがあります。

実は29万人のメードがいる香港においても、慢性的な人材不足に悩まされています。
そのため最近ではバングラデシュなど、新たな国からの受け入れを
進めざるをえない状況です。

その背景にあるのは、シンガポールやマレーシア、台湾との競争です。
本国への仕送りを目的に働く外国家事労働者は、よりよい環境を求めます。

それぞれの受け入れ国は、法律で定める最低水準に加え、
年間休日数などのトータルの待遇で競争しています。 

昨今その人材争奪戦は激しさを増しています。

インドネシアやフィリピンなどの「人材輸出国」は、本国の経済成長によって
自国内での賃金水準の向上と労働力の需要拡大が進んでいます。

今後も「輸出先」との待遇の格差が縮まる一方でしょうから、
海外で働くメリットは少なくなり
そのため出稼ぎ家事労働者の供給の伸びは期待できなくなりそうです。 


  ※TPPを絡ませていますので、「貿易」という視点で「輸出」と
   あえて使用しています。人種差別ではありませんのでご了承ください。


今年に入り、インドネシアの労働当局は2017年までに
海外への家事労働者の派遣を取り止める方針を打ち出しています。

海外でインドネシア人メードに対する虐待や、人身売買といった事件に
巻き込まれるなどの事態が相次いでいることが背景にあるようです。

そのためインドネシアからの家事労働者に多くを依存するマレーシアなどは、
予想される人出不足への対応を迫られています。 


こうした状況で、人口の多い日本が門戸を開けば、獲得競争はさらに熾烈になり、
人出不足は深刻になるでしょう。
もちろん日本における待遇がどのように設定されるかは未知数ですが。 

ただ、例えば外国人研修生の場合、平均的な賃金は月12万円程度であり、
最低賃金も香港などの2倍以上であることを考えても、
他国と比べ日本がかなり好条件となる可能性は高いです。 


高齢化が進む香港では、家事労働者は子守りや家事以外に、
老人の介護や日常生活の世話でも大きな役割を担っています。

日本の開国は、こうした国々の生活に大きな影響を与えるに違いありません。

しかし、受け入れる側の日本はどうでしょうか。

移民を巡る議論にもあるように、
多かれ少なかれ社会との摩擦といった新たな問題も生まれてくるでしょう。

加えて、教育面でも新たな議論を呼び起こすに違いありません 


「小皇帝」という言葉を知っていますか。

一般的には、一人っ子政策の影響で甘やかされて育てられた中国本土の
子供のことをこう呼びます。

しかし香港でも、「小皇帝」現象は社会問題として存在しています。
住み込みメードがいる家庭では、子供は生まれたその日から、
24時間世話をしてくれる補助者がいることになります。 


街中では、メードにカバンを持たせて通学する小学生の姿や、
隣に両親がいるにもかかわらず、メードに抱っこしてもらっている子供の姿を目にします。
裕福な家庭では、複数のメードを雇うことも珍しくなく、
その場合は1人の子供を「マンツーマン」で密着マークすることになります。 


日本の常識的な感覚では、違和感を覚える光景ですが、
何から何まで世話してもらえるのが当たり前の環境で育つことで、
自立心に欠け精神的にも弱いまま成長してしまうため
それが最近現地では問題視されています。 


これは、子供を非常に大切にして甘やかす傾向がある
香港ならではの問題かもしれません。

ただ日本でも、今後同じような社会問題が見られるようになることでしょう。 

香港でも子供をきちんと躾けたり、時に厳しく叱りつけたりするメードもいますが、
そうしたメードを雇い主は長い間契約し続けようとするので、
新たに見つけることは難しいのです。


日本が外国人の家事労働者の門戸を開放するということは、
そうした優秀な人材を巡る獲得競争に加わることも意味します。