タイの最近の気候は、40度前後。
湿度が少なくカラッとしているが日差しは強いようです。

体温よりも暑いタイで日本の電機メーカーは、
冷蔵庫や洗濯機などの白物家電で
韓国メーカーなどと熱い戦いを繰り広げています。

白物家電はデジタル家電などと違い、
現地の生活様式に合わせた商品を投入する必要があります。
というのは当たり前の話ですが、
バンコクでは特に現地化の極みのような商品企画と販売戦略が
ハンパではないようです。

たとえば

現地で販売する冷蔵庫の庫内には、なぜかフックがついています。

なぜこんなものがついているのか。
それは、ビニール袋を引っかけられるようにしているのだそうです。

バンコクの町では、屋台でお総菜をビニール袋に入れて売っています。
冷蔵庫にフックがあれば、これをそのままつるして保存できるのだと言います。

色も、日本では白やメタルが人気ですが、タイ人の好みは実に派手!
ピンクやオレンジなど明るい色の冷蔵庫に人気があるようです。

こうした好みは、日系メーカーの商品企画部隊が現地の家庭訪問を繰り返しながら
情報収集しているのです。

最近日系メーカー各社が狙いを定めているのは高級家電市場。

タイの大学卒業者の初任給は1.5万バーツ(約4万9500円)程度ですが、
最も高い冷蔵庫は10万バーツ(日本円で約33万円)。

それでも売れています。

この冷蔵庫はガラストップ加工をした扉で、前面に製氷機もついているうえ
優れたデザインで応接間にも置ける大型冷蔵庫です。

これを投入することでシェアを拡大しています。

日本に置き換えてみると、大卒初任給の10倍となると、約200万円。
日本で冷蔵庫に200万円をかけるなんて想像しづらいですよね。
でも、この冷蔵庫は、タイのほかに中近東の富裕層にも人気があるそうです。

では、消費者に高額商品を買ってもらうためにどうやっているのでしょうか。

日系メーカーは日本流の泥くさい営業手法で取り組んでいるようです。

白物家電はテレビなどAV製品と同じような販売方法では売れません。
展示しただけでは商品の良さが伝わらないからです。

日系メーカーは、商品の良さを丁寧に説明し、
消費者にそれを訴求してくれる店と組むことを重視しています。
外資系の大手量販店に雑多に並べることよりも、
地場の電器店との関係強化に力を入れています。

これは日本で専門店網を築いて販売拡大してきたノウハウが生かされており、
タイでも同様の手法で販売拡大を目指しています。 
この販売拡大戦略では電器店を担当する営業担当者が重要な役割を果たします。
電器店のやる気を引き出し支援することが主な仕事です。

日立アプライアンスはタイ国内にプロモーターと呼ぶ営業担当者を
なんと約700人も配置しているのです。
彼らは月に20日以上出張し、担当地域の販売店に張り付いています。

密着営業のほかにも大型トラックを改装して全国を走り回らせています。

電子レンジや冷蔵庫など高級製品を積み込んで店舗前で
出前セミナーを開催するのです。

観衆が見ている前で、高級電子レンジで鶏肉を焼くとコップ1杯分の脂が落ちる。

見物人から歓声が上がる。

こうした演出は、CMなどの広告では表現しづらいもので、
現地行脚ならではの説得力があるのです。
日本でもショッピングセンターなどでよく見られるように、
出前セミナーで調理した食材を試食してもらい、製品の良さを訴求するのです。

日立セールスタイの安中成春マネージングディレクターは、
「価格が高い理由をきちんと説明すれば買って頂ける。
日本で培った泥臭い営業ノウハウが生かされている」と話しています。


パナソニックもタイ国内に同規模の営業担当者を配置しています。
パナソニックは省エネ性能が高い商品群を「エコナビ」と呼び、
冷蔵庫やエアコン、空気清浄機などさまざまな商品に共通の訴求点を作っています。

営業担当者は電器店にエコナビ機能を搭載した商品ばかりを集めたコーナーを
設置してもらうようにお願いしています。
2011年は15店しかなかったのが、2013年には100店舗で
展示できるようになる見込みです。


商品知識とセールストークを叩き込むために、
電器店の営業担当者を年間60回以上集めて勉強会を開いています。

最近力を入れているのが美容家電です。
イオンで顔に潤いを与えるスチーマ、携帯用の電動歯ブラシなど
さまざまな美容家電を販売するためにオフィス街に出向いて
出前セミナーに取り組んでいます。

美容家電は日立の高級家電と同様に、「実演販売することで初めて訴求でき、
売れる商品」(パナソニックAPセールスタイの真島俊弘社長)と言っています。

日本でも同様ですが、タイで白物家電に各社が注力する理由として
市場の安定ぶりが挙げられます。

2012年の国内家電市場ではエアコンや冷蔵庫といった白物家電の出荷額が
デジタル家電を10年ぶりに逆転しました。
日本電気工業会によると2012年の白物家電の出荷額は2兆2006億円。
一方でデジタル家電は前年比57%の1兆6054億円にとどまっています。
薄型テレビやDVDレコーダーなどデジタル家電の価格が下落する一方で、
白物家電は価格を維持しているのです。

とは言っても、日本の市場はすでに成熟しているため、
伸びしろをアジアに求めているのです。

パナソニックの2012年度のアジア地域の売上高は
テレビなどデジタル製品が前年比86%に落ち込む一方で、
白物家電が121%に伸びる見込みです。
その結果、アジア全域で前年比107%の伸びを確保することができるそうです。

成長著しい地域で他国メーカーに勝つためには商品力と営業力が問われます。
コスト競争力以外にも、電器店との関係強化など泥臭い日本流の営業手法を
生かせる領域は大きいのです。

日本流を理解した営業担当者をアジア各地でそろえられるかどうかが
成否のカギを握っています。