国内のカーシェアリング市場の急成長が続いています。

ただ、世界的にみるとカーシェア発祥の地であるスイスは、
人口当たりの会員数が日本の5倍以上と、かなり先を走っています。

カーシェア大国スイスで市場をけん引しているモビリティ社の戦略から、
国内カーシェアリング市場の可能性が見えてくるのではないでしょうか。


交通エコロジー・モビリティ財団が公表した
日本国内のカーシェアリングサービスの会員数は、
2013年1月時点で28万9497人で前年比73%増、
車両台数は8831台で前年比36%増と急成長を続けています。

ここ数年の市場の伸びを維持すれば、今年度中に
「会員数30万人、車両1万台」を年内に達成するのはほぼ確実だそうです。


さらに、今後日本のカーシェアリング市場は、
現在の5倍に拡大する可能性すらあるとのこと。
それを裏付けるのが、スイスのカーシェアリング市場の動向です。


同財団によると日本の人口当たりの会員数は、現在0.23%(2013年1月)。
これに対し、スイスは1.3%に達しています。

そしてまた、日本はスイスと並んで、世界的にカーシェアリングに適した
市場環境を備えています。


では、カーシェアリングの発祥したスイスでは、
このビジネスはどんな動向をたどってきたのでしょうか?

スイスでカーシェアリングが始まったのは1987年。

「クルマを利用したいが、利用回数が少ないので買うつもりはない」
と考えていた27人が、共同出資で2台のクルマを購入したのが始まりです。

この協同組合形式でクルマを共有する仕組みは、次第にスイス全土に広がり、
1990年には合計550人で39台に増えました。

その後、複数の組合が併存しつつ会員数は増加し続け、
1997年には1万7400人で760台まで急増しました。

そして、この年、複数の組合を統合する形で、モビリティ・カー・シェアリング社
(本部ツェルン)が誕生したのです。

1つの組合になったことで、会員はスイス国内のどこに行ってもモビリティ社のクルマを
利用できるようになり、利便性が飛躍的に増しました。

今では会員数10万2100人、車両数2600台、ステーション数1340カ所にまで拡大し、
欧州最大のカーシェアリング会社に成長しました。

スイス全土では、国旗と同じ鮮やかな赤のモビリティ車が
誇らしげに走り回っていますよ。

会員数10万人というのは、スイスを追ってカーシェアリングが成長した
米国の最大手ジップカーの約30万人には及びませんが、
人口当たりの会員数で比較してみると、米国の0.26%に比べて
スイスの1.3%というのは世界的にみても突出しています。
(日本0.23% 2013年1月現在)

スイスでは、大人の60人に1人がモビリティ社の会員としてクルマを共有しているのです。

スイスでカーシェアリングがいち早く普及した背景には、

(1)	鉄道など公共交通機関が全土に発達しており、クルマへの依存度が低い

(2)	国土が狭いため、駐車場の確保が簡単ではない

(3)	成熟した先進国で、クルマをステータスとして所有する意識が薄くなっている

などが挙げられます。

そして、これらの条件は、そのまま日本にも当てはまり、
日本もスイスと並ぶカーシェア大国になる潜在性を持っているのです。


スイスのカーシェアリングの大きな特徴は、公共交通機関との補完性が高いことです。

公共交通機関と組み合わせて使えるように、駅のほとんどに
カーシェアのステーションがあります。

そして、そのほかのステーションも公共交通がない街の中にも多く、
チューリッヒ市内では平均250メートルの徒歩圏に点在しています。

生活圏の中ではモビリティ車を使い、
長距離は鉄道に乗る、という使い方が多いようです。

走行距離の料金設定も、街中で1時間使ってもタクシーより安くなっています。
鉄道など公共機関との補完性を意識し、定期券の所有者には
割引料金なども設定されています。

年会費は290CHF(スイスフラン:約2万9000円)ですが、
公共機関の定期券所有者は100CHF(約1万円)の割引となります。

1時間の使用料は小型車の場合、2.80CHF(約280円)と
タクシーより大幅に安く、料金には保険、ガソリン、税、高速道路代など
すべてが含まれています。

車種は、電気自動車(EV)30台を含む9種類を備えています。

車を所有するコストと比較すると、カーシェアと公共交通機関を利用することで、
年間1万キロメートルを走る人の場合で4000CHF(約40万円)以上の
節約になると、モビリティ社は試算しています。

利用者層は18~35歳が多く、レジャーや買い物などの足として
夕方や週末に頻繁に使うようです。

2001年には法人を対象にした「ビジネス・カー・シェアリング」を強化しており、
これにより平日の日中の利用が大きく増えました。

現在3500社以上が利用しており、特定車両の予約や会社敷地内での
カーシェア用駐車場の設置など、法人会員向けのサービス向上に取り組んでいます。

モビリティ社の2011年の売り上げは7億6万CHF(約700億600万円)、
利益は1300万CHF(約13億円)です。

モビリティ社が成長を続けている理由は、
利益を積極的にICT(情報通信技術)に投資し、
会員の利便性を高めていることがあります。

クルマは24時間、電話、インターネット、携帯アプリで予約できます。
92%がオンライン予約です。
最小1時間から最大16日まで借りることができますが、
長期の場合はレンタカーの方が割安になることもあり、
その場合は提携先のレンタカー会社を紹介します。
こうしたユーザー本位のサービスが受け入れられているのです。

クルマの受け渡しは無人で行います。
会員に発行されるモビリティ・カードで車のドアを開ける仕組みで、
このカードを車内の端末に差し込むことにより、
予約などの変更、利用料金などをチェックできます。

途中で故障や事故があった場合でも、電話による相談を
24時間体制で受け付けています。


代表のAlain Barmettler氏は、今後の戦略を次のように語っています。

「組合制から出発したこともあり会員は車を大切に使ってくれている。
利用者が増えてもこうしたマナーを徹底させたい。

今後は西部フランス語圏のネットワークの拡充に力を入れ、
近隣諸国のカーシェアリングと提携することも検討している。

ICTによるカーシェアリング運用のノウハウは高く評価されており、
フランスのルノー社のカーシェリング部門でも採用されている。
今後もこうした運用ノウハウや、ソフトウエア技術を海外に売りたい」

カーシェアリングの利用形態には、大きく分けると
公共交通機関を補完する要素が大きいスイス型と、
2台目、3台目として利用されるケースが多い米国型に分かれます。

日本は、公共交通機関が発達しており、スイス型に近い市場と言えます。
スイスの普及度合いをみると、国内のカーシェアリング市場は
まだまだ伸びシロが大きそうです。