【林則行氏のコラムより】英語、本音の上達法!Vol.8
疑問文は使わなくていい
Do you knowを付ければ何でも質問できる!
今日のポイント
・疑問文のように厄介なものは銅メダルのうちは捨てておけばいい。大事なところに集中しよう。
心に思い浮かんだことをその場で口にするのは容易ではありません。そのため、「大事なところだけに集中する」という方針で臨みます。疑問文は優先順位の低い代表例なので忘れていいです。
英語を話す最初のステップは英単語スピーキングでした。必要な単語を並べるだけで話すものです。このアプローチの骨子は「大事なところだけに絞る」というものです。「ひらめき法」でも同じ方針で臨みます。
銅メダル英語で英会話をする際に、「疑問文を話さなくていい」と申し上げたら、「それは乱暴だ」と思われるかもしれません。「疑問文がないと会話にならない。疑問文は中学1年から習っているのに」と反論されるでしょう。
疑問文を避ける理由をひとことで言えば、「難易度が高いから」です。その割に絶対不可欠とは言えません。
「難易度が高いとは、どうしても思えない」と思うかたも居るでしょう。それは外国人との会話の経験が少ないからではないかと察します。疑問文ではない普通の文でも、すぐに口にするのは容易ではありません。疑問文はそれにも増して時間がかかってしまいます。
ぼくは、米国の大学院に留学した2年の間、疑問文なしで通しました。卒業するときでさえ、疑問文をもさらりとしゃべるだけの語学力は身につきませんでした。その経験から「疑問文は当面忘れていい」と申し上げています。
実例を交えて解説しましょう。まず、日本語です。
平叙文: あれはタクシーです。
疑問文: あれはタクシーですか?
となります。日本語では1文字加えるだけで、普通の文が疑問文に早替わりします。
これが英語では
平叙文: That is a taxi.
疑問文: Is that a taxi?
となります。
英語では that と is との場所が交代しています。倒置です。
日本語では最後にただ「か」をつけるだけなのに、英語となると倒置しなくてはならないから、難易度が高いと申し上げました。
ここで疑問が出てくるかもしれません。
「どうしてそんなのが難しいんだ。慣れっこになってるよ」というものです。学生時代の英語の授業中ならば、まず普通の文を頭の中でつくり、それを倒置して疑問文をつくっていても問題ないでしょう。そうやって順を追っていけば難しくはありません。ただし、実際の会話ではそういうステップを踏んでいる余裕はありません。最初から疑問文を口にしなくては間に合いません。
あるとき、ぼくはニューヨークでタクシーを拾おうと手を道の方に出しました(米国では手は上ではなくて、横に出すものです)。すると、クリーム色の車が止まったのです。ニューヨークのタクシーは黄色と決まっていると思っていたので、クリーム色はもしかしたら怪しい白タクかもしれないと思い、周りにいる人に聞きました。この車に乗るべきなのかどうか即座に判断しなくてはなりません。
That is a taxi? がぼくの口をついて出た英語でした。とっさのときに倒置なんて考えていられません。
「そういう緊急のときはしかたがないが、普段は正しい英語を使うべきだ」とおっしゃるかたが居るかもしれませんが、会話はいつも「とっさ」に対応しなければならないものです。ぎこちない間をあけないためには、余分なことを考えていてはいけません。
ちなみに、中国語の疑問文は、日本語と同じように「か」に当たる語を文尾に付けるだけ。日本語と同じやり方です。中国語の疑問文は習ったその日からすらすらと口にすることができました。この際に安心感を味わい、「倒置するのはきついんだ」と英語の難しさを改めて気づきました。
Do、 Doesで始まる疑問文も厄介
Is で始まる疑問文は普通の文から語順が変りましたが、 Do を文頭に付ける疑問文では倒置は起こりません。それでも難易度が下がるわけではありません。
Doで始まる疑問文を見ていきましょう。
He has a good memory. 記憶力がいいんだ。
Does he have a good memory? となります。
面倒な点はhasがhaveに変っているところです。しかも主語がYouとかIの場合はDoであり、He、 Sheの場合はDoesになるという厄介なものです。このDoは日本語では「か」の働きをすることになるわけですが、われわれは文の最後に「か」をつけるのに慣れていますから、文頭にDoを付けるのに慣れるまでは苦痛です。こんなところに気を取られていたら、肝心の中身が話せません。
この場合も
He has a good memory? とすればいいわけです。文尾のイントネーションを高く上げればそれで十分です。
疑問文の仲間に付加疑問というのがあります。
He has a good memory, doesn’t he? というものです。
「あいつは記憶力はいい、よね?」
といった感じです。途中まで平叙文で話していたのが、気が変って疑問文にするものです。話すうちに自信がなくなってきて最後に疑問を投げかけた感じです。
これはぼくが薦める、最後に「?」をつけただけの対処法と似ています。付加疑問文は正統な英語ですから、こちらの方が洗練されていますが、銅メダル英語では通じることを最優先するので、「普通の文+?」で何ら問題はありません。
なお、付加疑問文という存在を忘れていたかたもいらっしゃるでしょう。ここでは説明のために触れましたが、この種の英語はきれいに忘れていただいてけっこうです。
「文末のイントネーションを上げるだけなんて嫌だ」と思うかたは文末にRight? を付けるのをお薦めします。
He has a good memory, right?
といった具合です。これは完璧に正しい英語です。ただし、「そうだよね。ぼくの言ってることが正しいよね」という念押しの意味合いが強くなります。
すべての疑問文を省略できればいいのですが、そうはいきません。5W1Hといった、「いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どのように」(When Where Who What Why How) といった言葉で始まる英語は話さないわけにはいかないからです。
5W1Hで始まるセンテンスは通常の疑問文と同様に、Isの倒置やDo動詞の変化が待っています。できれば、この煩わしさから逃げたいわけです。この場合は2つの逃げ方があります。
(1)5W1Hだけを最後に付け加える
「彼女はどうしてダイエットしてるの?」
Why is she on a diet? が正しい英語です。
これを、
She is on a diet. と言ったあとで、 Why? だけを付ければ、事が足ります。
「彼女はダイエットしてるんだ。どうして?」といったニュアンスになります。これは英単語スピーキングの延長ですが、ネイティブでもやっているので、正統な英語の端くれと考えて問題ないでしょう。
(2) Do you know を文頭に付ける
相手に何か質問するときは、相手が答えを知っていると思っているから聞くわけです。従って大概の場合はDo you knowを付けることができます。これを付けると、why以下は普通の文になっているので楽に英語が口にできます。
上記の文は
Do you know why she is on a diet? となります。
意味は「どうしてダイエットをするの?」から「どうしてダイエットをするのか知ってる?」に変ります。厳密に言えば、後者は知っているかどうかだけを聞いているのですが、どちらで質問しても相手の回答は同じです。
Do you knowを文頭に付けることができない場合があります。常識で考えれば分かるのですが、主語がYou(あなた)のときはだめです。
Why are you in a hurry? どうして急ぐの?
You are in a hurry, why? という英語はあっても
Do you know why you are in a hurry? どうして急ぐのか理由は分かってる?
という英語はありません。本人は理由があるから急いでいるのです。
「お前は意味もなく急いでいるんだろう」という詰問になってしまいます。
最後に、Whyだけに特殊な言い回しがあります。How comeに言い替えることができます。
How come she is on a diet? となります。
How come 以下は普通の文で大丈夫。倒置もDoも要りません。これは便利です。Whyに比べて若干軽い言い回しですが、この際そんなことは気にする必要がありません。
WhereやWhatなどにはこうした便利な表現はありませんから、(1)か(2)で対処してください。
他にも要らない表現がある:仮定法と感嘆文
疑問文以外でも優先順位の低い言い回しは忘れていただいてけっこうです。
仮定法とは、あり得ないことを表す文です。「自分が鳥だったら」とか「もし20年前に戻ることができたなら」というのが仮定法です。これは普通の If 文を代用してかまいません。
最後になりますが、感嘆文(なんと~なのだろう)です。そんな文体があったなあと思い出すでしょう。これは全く話す必要はありません。
What a beautiful flower! は The flower is beautiful! で代用できるからです。
ビューティフルのビューを長めに言えばそんな雰囲気が出ます。
疑問文も仮定法も感嘆文も捨てていい、と申し上げているのは、さぼることを薦めているのではありません。
私たちの現状の英語脳は、必須語とそれを結び付ける語句を組み合わせるだけで精一杯です。その精一杯な頭の回転をもっと楽にして、英語が簡単に出てくるようになるコツを次回披露します。