銅メダル英語でここまでしゃべれる

今日のポイント

・銅メダル英語は英米人100点満点で20点の実力。それでも外人と一緒に仕事ができ、自分の意思を伝えられるレベル。

・20点でも会話ができるのは、コミュニケーションは語学力以外の力が大きいからだ。

 

ここで目指す銅メダル英語のレベルとは英米人を100点とすると20点なのです。こう言うと、全く正反対の2つの立場の驚きの声が上がってきそうです。

 

1)「これまで一生懸命やったとは言わないけど、中学、高校、大学と勉強してそれでも10点台なの?落ち込むなあ」

2)「たった、20点でいいの?それでしゃべれちゃうの? だったら、いけそうな気がする」

何事でも、初心者の方が実力の伸びを感じやすいものです。例えば、毎日1語ずつ英単語)を覚えたとします。100日目には100語が暗記できます。200日目には200語になります。この伸び率は2倍(100%増)です。

 

 100日ごとに覚えることのできる単語数はいつも一定で100語ですが、その後の伸び率は低くなります。

  200語→300語(伸び率50%)

  300語→400語(伸び率33%)

  400語→500語(伸び率20%)

 

といった具合です。上級になるほど伸びが感じにくくなるものです。

ということは、80点が目標なら到達は厳しいですが、20点が目標なら難しくないという理屈が成り立ちます。

 

銅メダル英語は20点を目指すものですが、それでも以下のことができるようになります。

・外人に自分の言いたいことを伝えられる

 ・外人と一緒に仕事ができる

 ・海外出張や英語のプレゼンテーションができる

 ・海外の大学や大学院に行くことができる最低限のレベル

 ・現在、海外駐在している人の英語力

 ・「英語がうまい」と、はったりを張ることができる

 

 英検だったら2級程度、TOEICなら600点くらいから銅メダル英語になることができます(つまり、英検2級なら英語力は20点程度です)。

 

 「自分は英検2級だけど、外人が来たら逃げ出したくなっちゃうよ。自分が銅メダルだとはまるで思えない」と、思う方がほとんどではないでしょうか。

 

 ここが大事なところです。

 

 最低でも英検2級程度の力がないと銅メダルには達しません。かといって、英検2級の人がすべて銅メダルかというと、これは違います。この中でノウハウを身につけた人だけが銅メダルを手にできるのです(なお、このコラムは現在英検2級に到達していない人でも、これからお話しする学習方法で学び続ければ、銅メダルになれるように構成されています)。

 

 なぜ、同じ英検2級でも銅メダルになれる人となれない人が出てくるのか? それは、英語の力に2つの軸があることで説明できます。「英語ができる」というY軸と「話が通じる」というX軸です。

 

 図式的に言うと、

 ・英語がうまく、話が通じる

 ・英語が下手で、話が通じない

  というごく普通のパターン以外に

 

・英語がうまくても、話が通じない

 ・英語が下手でも、話が通じる

  のパターンがあります。

 

銅メダルを目指すということは、実力自体を伸ばすのではなくて、実力はそのままで、話を通じさせるようにすることです。

 

どうして20点でも会話が成立するのか、もう一つの大きな秘密は「お互いが分かりあうのに言葉はそれほど重要な要素ではない」ということにあります。

 

 みなさんも外人の話が分かったという場合に、聞き取れた英単語をつなぎ合わせて類推しただけではないということです。雰囲気でなんとなく理解できたのです。

 

「コミュニケ―ションは言葉だけじゃない」ことにぼくが気づいたのは大学生のころでした。デパートの中をふらふら歩いていたら、「あなたの英語力を確かめませんか?」と言われたときです。よくある英語教材販売のセリフです。

 

 まずは、教材テープを聞くテスト。問題の3割もできませんでした。そのあと外人講師との会話レッスンです。外人講師の後について同じことを繰り返します。この出来も冴えませんでした。

 

 外人講師はぼくの英語力を批評して、「聞き取りもスピーキングも普通の大学生程度だから悪くないよ」と言っていました。それは社交辞令で、つまり、「下手だ」という意味でした。その通りだからしかたありません。

 

 最後に外人講師は「質問はある?」とぼくに聞きました。英語についての質問は特にありませんでしたが、ちょうどそのころ、米国の大統領選挙が近かったので、「大統領選挙は日本に居ても投票できるのですか?」と聞きました。

 

 すると、「できるよ」と言い、米国外での選挙の仕組みや自分が投票しようという候補の話、「アメリカは今変わらなくてはいけない」といった彼の持論を展開し始めました。ぼくが彼の話の中身が分かったのは妻の中国語と同じ原理だったのでしょう。ぼくは相槌として、「YES」と言うか、ただ頷くかしていました。

 

 彼は語り終えると、ぼくのスピーキングの力に最高点につけ直しました。「君の会話力を見直した。君はここ数週間に会ったレッスン生の中で最高に会話力がある」と言いました。

 

 ぼくが話したことと言えば、「大統領選挙は日本に居ても投票できるのですか?」だけです。後とは彼が自分で話し続けたにすぎません。誰だって自分が好きな話題を話せば楽しいはずですが、彼はプロの英語講師なのです。ぼくは彼の目を誤魔化すことができたのです。

 

 そのときは、どうしてぼくがそこまでの評価を受けたか分かりませんでした。

たぶん、彼は日々、日本人を相手に英語力判断をしていた。「質問は?」と聞いても誰も何も聞かなかったのでしょう。そうした日本人の気持ちはよく分かります。外人から返って来る答えがどうせ分からないだろうから黙っているのです。そんなわけで、彼はレッスン生と会話らしい会話を全くしていなかったのです。唯一ぼくだけが大統領選挙のことを聞いたのでしょう。

 

 すなわち、ぼくが「最高の会話力」だったのではなくて、ぼくは彼にとって「唯一の会話らしい会話」の相手だったのだと気づきました。

 

 それでもプロから「最高の会話レベル」と判断された事実は重いと思います。当時のぼくの英語力は10点台でしたが、当時から銅メダル英語が芽生えていたと言えるかもしれません。

 

 もし読者のみなさんの中に「私は人と話すのは嫌い。できるだけ人を避け、自分の殻に閉じこもっていたい」という方がいらっしゃったら、銅メダルの道は遠いと言わざるを得ないでしょう。同じ英検2級、1級でも銅メダルになれる人とそうでない人が出てくるのはこの辺りが大きな要因です。

 

 逆に人と接するのが楽しいという人は上達が速いでしょう。ぼくの外人講師とのやりとりを読んで、「自分も何か簡単な質問を投げかけてみるだろうなあ」と思った方は現在が英検3級レベルでも、銅メダル英語の素質があると言えます。